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聞こえない怨念のバラード

[ソードワールドRPG]

はじめに

 このシナリオは「ソードワールドRPG完全版」に対応したものです。
 時代は特に決めていませんが、新王国暦520〜521年くらいが適当でしょう。冒険の舞台となるのは、アレクラスト大陸南東部、「神聖王国」の別称で知られるアノスです。
 この冒険は4〜5レベルの中堅処の冒険者達4〜6人用にデザインされています。シナリオの根幹が“アノスの法王暗殺”と言う、大きな事件を扱っていますので、余り低レベルな冒険者達ですと事件が手に余ってしまうでしょう。
 また、このシナリオは『シナリオポイント』と言うものが設定されています。この『シナリオポイント』と言うものは、冒険者達がどれだけ上手にシナリオを立ち回ったかと言うことで増減するポイントです。シナリオ中、上手な行動にはプラスのポイントが、逆にマズイ行動にはマイナスのポイントが割り振られています。満点は点ですが、特別満点を取ったからといってどうと言うことはありません(笑)。あくまで、セッションのフレーバーや、セッション後のディスカッションなどでネタとして利用していただければ幸いです。もちろん、シナリオポイントがプラスになるような行動が全て正しいプレイというわけでもありませんので、あくまで参考程度にお考え下さい。
 このシナリオは、分量としては少し多めの中編シナリオです。この為セッションが2回前後になる可能性があります。1回のセッションでエピローグを迎えることも不可能ではないかと思いますが、その場合、かなり駆け足なセッションとなる可能性があります。


冒険の概略


 光の都として、また法王の治める聖なる都として大陸中に名高いファーズ…この街を今、不穏な空気が覆い尽くそうとしていた。狂乱状態に陥り暴れ狂う人々、法王暗殺の噂と、闇に踊る暗黒神の影…次第に明らかになる陰謀劇の裏に隠された20年前の事件の真相とは…
 この冒険は4〜5レベルの冒険者達4〜6人用にデザインされています。

冒険の舞台


 アレクラスト大陸南東部「神聖王国」の別称で知られるアノスの王都ファーズから、この冒険は始まります。この街は「光の都」の別称で知られ、ファリス最高司祭にしてアノス国王である“法王”レファルド?世の治める都です。都の中心部「聖なる丘」として知られる小高い丘の上には王城ホーリーハンマーと最高神殿の大聖堂がそびえ立ち、その白亜の大理石の建造物は、大陸一荘厳な建造物として大陸中にあまねく知れ渡っていて、大陸中からのファリスの巡礼者のみならず、この建造物の見学にやってくる者達で年中賑わっています。 

冒険の導入


 新王国歴522年の晩秋、北部グロザムル山脈から吹き下ろす冷たい北風が唸りをあげ始める頃、冒険者達は神聖王国アノスの王都ファーズへとやってきます。
 都を取り囲む城壁の城門で税の支払いと通行手形の確認を済ませた冒険者達は、城門の衛兵に泊まるのなら聖ウィリアム通りの「さすらいの旅人亭」が良いと勧められ、教えられたとおり宿を求めて「さすらいの旅人亭」へと向かうことになります。

第1幕 中央通り


 城門をくぐり抜けて冒険者達がファーズの都へ入ったのは、正午を少し過ぎた時刻です。衛兵に教えられたとおり聖ウィリアム通りの「さすらいの旅人亭」を目指すことにして、中央通りを歩いていくと、中央通りは様々な店が建ち並び、昼食の煙があちこちの建物から流れ出て、冷たい北風に流されていきます。中央通りにはパンや肉、野菜や果物などの商店が建ち並んでいて、大勢の人がそれらを買いに通りに出ていますが、皆秩序だった行動をとっており、雑然とした雰囲気は少しもありません。中央通りにはまた、ファリスの神官服を着た着飾った音楽隊が出ており、冬のための貧しい人々に対する募金(歳末助け合い募金)の呼びかけを行っています。
 冒険者達がそんなにぎやかな雰囲気の中、中央通りを歩いていると、突然、右手の方の人だかりの中からすさまじいわめき声が上がり、ついで悲鳴と、怒号が上がります。冒険者達が何事かと覗いてみると、人だかりの中央に、角材を持った男が立っており、口から泡を吹きながら、支離滅裂なことを喚き散らして角材を振り回しています。
 冒険者達が止めにはいるのならば、角材を持った男と戦闘になります。

     角材男

モンスター・レベル=0

敏捷度=10 攻撃点=角材:7

打撃点=3 回避点=8 防御点=2

生命点/抵抗値=10/8 (死亡ライン:−2)

精神点/抵抗値=10/8


 冒険者達が止めに入っても、入らなくても、すぐに街の治安部隊がやってきて男を取り押さえます。男はサニティをかけられればすぐにおとなしくなり、「自分でもどうしてそんなことをしたのか分からない、ただ風の音が急に大きくなり、そのうち頭が割れそうな程痛くなって、耐え難い憎悪の念に駆られた」と説明します。
 街の治安部隊は、その説明を聞くと顔を見合わせて「またか」と言うような顔をすると、肩をすくめてとりあえずもっと詳しく事情を聞くため、治安隊の詰め所まで連行していきます。
 もし、冒険者達が治安部隊の兵士にどう言うことかと説明を求めると、兵士はうんざりしたような顔で、ここ2週間ほど、この光の都でああいった訳の分からない暴行事件が続発しており、治安部隊は休む暇もないと、愚痴をこぼします。とらえられた犯人は皆錯乱状態で、サニティをかけると落ち着きを取り戻し、決まって頭が割れそうにいたくなり、耐え難い憎悪の念に駆られて、後は何も覚えていない。と言うのだそうです。 また、街中では暗黒神の信者達が暗躍しているのではないかとの、無責任な噂も流れており、そちらの方面の調査のためにも人員が割かれていて、人手不足が現状で、この分では冬至節までに家に帰れそうもないと、溜め息をつきます。
 このときに冒険者達が止めに入り、スリープクラウドやサニティなどで相手に怪我をさせることなく取り押さえていれば治安部隊から感謝されますが(シナリオポイント+5)怪我をさせてしまっていると治安部隊からいろいろと小言を言われます。(シナリオポイント−1)万が一男を殺してしまっていると、殺人の容疑で治安部隊の本部へと連行され、完全に正当防衛と認められるまで投獄されてしまいます。(シナリオポイント−10)

第2幕 中央広場


 中央通りを進んでいくとやがて緑化された公園のような所へとたどり着きます、公園の中央部は円形の広場のようになっていて、大勢の人だかりが出来ています。人だかりの方からは歌と音楽が聞こえてくるので、どうやら歌劇のようなものが演じられているようです。
 もし冒険者達が足を止めて歌劇を覗いていくことにした場合、人だかりの中央で二人の若い男女が歌劇を演じているのが目に入ります。男の方が大型のグランド・ハープを奏で、女の方が澄んだ声で歌いながら踊りを踊っています。
 冒険者達が覗き込んだときには、ちょうど歌劇が終わりに近づいたクライマックスの部分らしくそのまま見物していると5分ほどで公演は終了します。(万雷の拍手と喝采)

 1.演奏中に二人に話しかけた場合、二人はPCの呼びかけを無視して、演奏を続けますが、あまりしつこいと、周りの観客達が怒ってPC達にブーイングを浴びせかけます。それでも話しかけるのならば、観客達は怒って小石などを冒険者達に投げつけ始めます。もし、このことが冒険者達と観客達との大喧嘩に発展してしまった場合は、直ちに治安部隊が駆けつけ、冒険者達を含む全員が逮捕され、投獄されてしまいます。(シナリオポイント−5、誰か殺してしまっていたら−15)


 2.演奏中に観客達の様子を観察すると、観客達は誰もがうっとりとその公演に見入っています。まるで周囲には何もないかのようなうっとりとした表情です。


 3.公演が終了した後二人に話しかけると、二人は快く応じ、自分たちは「リルチューレ」と言うグループ(と言っても二人だけですが)で、アレクラスト中を巡ってあちこちで公演して暮らしている。と教えてくれます。男は「アラン」、女は「リタ」と名乗り、恋人同士である、と説明します。(シナリオポイント+5) 


第3幕 さすらいの旅人亭


 冒険者達が聖ウィリアム通りにある、「さすらいの旅人亭」の扉をくぐると中からは美味しそうな料理と、ビール、パイプたばこの臭いが漂ってきます。(「さすらいの旅人亭」の宿泊料金は1泊朝食付で50ガメルです)
 店はかなり大きな作りですがそうとう混雑しています、店の奥には大型の暖炉とステージがあり、ステージの脇の壁に吊されているコルク製のボードには、共通語と東方語で「リルチューレの歌劇 今夜8時開演」と書かれています。
 何とかして暖炉近くのテーブルに落ち着いて、旅で汚れたマントを脱いでいると、階段の近くの暗がりの中のテーブルに1人の黒ローブの人物が着いており目深にかぶったフードの奥からこちらをじっと見ていることに気が付きます。
 PCが何かの行動を起こすより早く、その黒ローブは唇の端にほんの一瞬、酷薄そうな冷笑を浮かべると、席を立ち、カウンターに銀貨を放ってよこすと店の扉をくぐって通りの人ごみの中に消えていきます。(どのような行動をとったとしても、この黒ローブの男を捕まえることも、尾行することも出来ません。)

第4幕 酒場の乱闘


 PC達が給仕の女の子に注文を告げて、外の冷たい風で冷えてしまった体を温めていると、突然、店の中に怒号が響き渡ります。何事かと見ていると、1人の男が立ち上がり顔を怒りでどす黒く染めながら、もう1人の男に何か喚き散らしています。どうやら男は「リルチューレの2人を馬鹿にしたのは許せない、今すぐ謝罪しろ」と喚いているようで、もう1人の男は何が起こったのかと目を白黒させています。そのうち喚き散らしている男の方がもう1人の男の方の胸ぐらを掴むと、やおら殴りつけます。陶器製のマグや皿が、磨き上げられた床に落ちて派手な音を立てて割れ、殴られた男は反対側のテーブルにたたきつけられます。給仕の女の子は悲鳴を上げ、店の主人は「店を壊す気か!」と喚きます。
 冒険者達が仲裁に入っても(シナリオポイント+5、戦闘になった際のデータは角材男のデータを使ってください)入らなくてもすぐに治安部隊が駆けつけ、男を治安部隊の詰め所に連行します(万が一PC達が男を傷つけてしまっていたり、殺してしまった場合の治安部隊の対応は、角材男の場合に準じます)もし、PC達が男を無傷で即座に取り押さえた場合には、店の主人が感謝のしるしとして食事代をただにしてくれます。

第5幕 暗い噂


 喧嘩が収まり、再び静かになった酒場では、居合わせた客達がヒソヒソ、ボソボソと低い声で噂話を始めます。
 このときPC達が噂話に興味を持ち、聞き耳を立てたり、積極的に噂話に加わるのならば以下のような情報が入手できます。

 1.20年前の「闇の血粛清事件」で殺された、領主とダーク・エルフの怨念の仕業でこの街の治安が乱れ始めた。かつての領主の屋敷跡には、殺された領主の亡霊が出るらしい。(偽)

 2.今回の狂乱事件の裏には、暗黒神ファラリスの教団が関与しているらしい。(真)

 3.法王の命がねらわれているという噂がある。(真)

 4.この混乱に乗じて、東部の忘却の湿原に住むリザードマン達が成長したウォーター・ドラゴンを使ってせめて来るという噂だ。(偽)

 5.これら一連の事件は、全てロドーリルの陰謀である、プリシスとの戦争にアノスが関与しないよう、国内に混乱の種をばらまこうとしている。すでに数人の間者達がこの国に潜伏し、破壊活動と情報収集活動を行っている。(偽)

 6.巨人像が戦争に使われようとしている。既に数人のスパイとおぼしき連中が巨人像を調べているのが目撃されている。(偽)

 さて、PC達が店の主人に、自分たちは冒険者で仕事を探している。何か仕事の口はないか、等と訊ねると、店の主人はグラスを拭きながら肩をすくめて(噂でもあったように)ここファーズの街で暗黒神ファラリスの秘密教団が暗躍しているらしく、街の治安部隊とファリス神殿では噂の真偽を確かめようと、いろいろと調査しているようなのでそのことを調べて治安部隊に報告すれば、なにがしかの報酬は得られるだろう、と教えてくれます。


リルチューレについて

 もし、PC達がリルチューレについて興味を持ち、店の主人に尋ねると、リルチューレと言うのは、アレクラスト中を旅して回っている、「アラン」と「リタ」という名の恋人同士のグループで行く先々で歌劇を披露して歩いているそうだ、ここファーズの街には2週間ほど前から滞在している。と教えてくれ、興味があるんだったら、今晩8時からこの店で公演の予定があるから見物してはどうか、と言ってきます。


闇の血粛清事件について(シナリオポイント+3)

 もし冒険者達が噂話のなかの「闇の血粛清事件」に興味を持ちさらに詳しく、店の客や、店の主人に話を聞くと以下のような情報が得られます。

 今を去ること20年前の新王国歴502年、当時のキングスヒル教区の領主にして教区司教だったロナウド・アルシャーン卿が邪教にたぶらかされ、ダーク・エルフの血を引く娘を妻として子供までもうけていた事件。基本的にファリスの聖職者は結婚が認められておらず、また司教の地位にある者がよりにもよって邪悪なダーク・エルフの血を引く娘を妻としていたことが治安当局に発覚し、火あぶりとなった事件。治安当局者達が屋敷を包囲し、大司教達による審問会への出頭を命じたが、アルシャーン卿がこれを拒否したため、屋敷ごと火を付けられた。

 これ以上の詳しい情報はここでは得られません。


第6幕 ファラリス教団の調査(シナリオポイント+3)


 もしPC達が店の主人の話に興味を持ち自分たちでファラリス教団についての調査を始めることにした場合、今日の内に出来ることはほとんどありません。時刻は既に夕暮れ時であり、ほとんどの店や公共機関が閉まってしまうからです。今日の内に出来ることは以下の内の1つです。

 1.魔術師ギルドを訪ねる

PC達が魔術師ギルドを訪ねることにし、街の人に魔術師ギルドの場所を尋ねて行ってみると、魔術師ギルドはこぎれいな小さな塔を持つ建物ですが、その規模は小さく、オランの賢者の学院とは比較にもなりません。ここファーズ(と言うかアノスの国)では、古代語魔法の魔術師達は、尊敬はされていて敬意を持った扱いはされてはいるものの、あまり信用されていません。と言うのもカストゥール王国時代、カストゥールの魔術師達が宗教を弾圧した過去があり、敬虔なファリス信徒達の多いこの国では魔術師達はあまり信用されていないのです。このような理由から魔術師ギルドはあまり大きな勢力は持てないのです。ここファーズにおいても20人程度の魔術師達が細々と、ギルドを運営しているだけであり、ほとんど何の情報も得られません。

 2.盗賊ギルドを訪ねる

   PC達が盗賊ギルドを訪ねる事にした場合、物乞いなどに金を握らせて(100ガメル以上が必要でしょう)やれば、「聖なるピーターズ」という名の酒場へ行けと教えてくれます。「聖なるピーターズ」へ行き、酒場の主人ピート・ガレスコ(この街のギルド・マスターです)に金を支払えば(200ガメル以上は必要です)いくつかの情報を売ってくれます。まず、今回の件には、ギルドは一切関係していないこと、ファラリス信者達が街で暗躍しているという噂ではあるものの、連中が本当にいるのか居ないのか確証はもてないこと、怪しげな連中が夜出没していること、そいつらはどうやらよそ者らしいこと。などの情報を売ってくれます。

*PCが物乞いに接触することを思いつかなかった場合、盗賊ギルドへ行くことは出来ません。


 3.治安部隊本部を訪ねる

   PC達が治安部隊本部を訪ねることにし、治安部隊本部を訪ねると、治安隊本部は街のあちこちから暴行事件で連行されてきた人々でごった返しています。冒険者達がファラリス教団の件できたと言うと、ラエル・ロッツィという名の衛兵が応対に出ます。ファラリス教団について訊ねれば、ラエルは現在リューン・デクストラという名のファリスの神官戦士がその件を担当していること、リューンは調査のため今ここには居ないこと、治安部隊としてもファリス神殿としても例え噂であったとしてもファラリスの秘密教団が暗躍しているとなれば捨てて置くわけには行かないこと、もし、冒険者達が何かファラリス教団の壊滅につながるような情報を手に入れれば、報酬として1人1000ガメル程度の支払があるだろうことなどを話してくれます。


第7幕 リルチューレの公演


 その日の夜(冒険者達が調査を行ったか、行わなかったかに関係なく)冒険者達が「さすらいの旅人亭」で夕食を取っていると、(相変わらず店は混雑しています)店の扉が開き冷たい北風と共に、2人の男女が店に入ってきます。
 と、途端に店中の客達は、2人を拍手で迎えます。店の主人は2人を愛想良く迎えると、重いマントを受け取り2人を店の奥の開けたステージの上へと案内します。
 2人はステージの上に立つと観客達に一礼します。男の方は、ケースの中から大型のグランド・ハープを取り出すと、少しかき鳴らして、調律を始めます。
 このときバード技能かセージ技能を持つキャラクターが、バード技能(又はセージ技能)+知力ボーナスを基準とする、目標値12のチェックに成功すると、そのハープが通常のグランド・ハープより3本弦が多いことに気づきます。もし、ソーサラーがセンスマジックの呪文をかけてみれば、そのグランド・ハープから魔力を感知できます。
 男の方が調律をしている間、女の方は荷物の中から、香炉をとりだして小卓の上に乗せると革の小袋から粉のようなものを取り出して、香炉に入れ、香を焚き始めます。香炉からは奇妙な甘い香りが漂い始め、やがて店中に漂い始めます。
 やがて準備が終わると、「リルチューレ」の2人は観客達に深々と一礼すると、歌劇を始めます。男(アラン)が静かにゆっくりと、グランド・ハープの弦をかき鳴らし、女(リタ)はその、もの悲しくも美しい音色にあわせてゆっくりと静かに、歌い、舞い始めます。
 周囲に漂う甘い香の香りと相まってまさにその歌劇は、幻想的な雰囲気で観客達を魅了していきます。歌劇の内容は森のエルフの乙女と、人間の司祭との悲恋物語で時に激しく、時にもの悲しく演じられていきます。観客達は水を打ったように静かにこの歌劇に見とれています。
 このときにゲームマスターは歌劇を見ているキャラクター全員にこっそりと目標値=13の精神力抵抗のチェックを行ってください。失敗したキャラクターはこの歌劇とリルチューレの熱狂的なファンになってしまいます。このチェックの際1ゾロを出して失敗してしまったキャラクターは、突然、頭痛と激しい怒りの感情にさらされます。さらに続けて目標値=12の精神抵抗に失敗してしまった場合、そのキャラクターは突然、口から泡を吹きながら暴れはじめ、サニティなどで落ち着かせるまで暴れ続けます。
 無事公演が終わり、2人が観客に向かって深々と一礼すると、観客達は一拍おいてから万雷の拍手と喝采を2人に浴びせます。2人の前に置かれたグランド・ハープのケースにはかなりの額の銀貨が投げ込まれていきます。
 やがて観客達もぞろぞろと家路につきはじめ、リルチューレの2人は片づけを始めます。このときに中央広場で会話をしていなければ、話しかけて自己紹介などをしてもらえます。また以下のことを質問することも出来ます。

 1.通常のグランド・ハープより3本弦が多いことについて

  共鳴弦である。

2.なぜ香を焚いたのか

  ムードを盛り上げるため。

 3.焚いた香はどう言うものか

  香木からとれる普通の香だ。

 4.香を譲ってくれないか

  今日はもう持っていない。

 5.歌劇はどう言うものか

  昔の古い悲恋物語だ、自分たちで自作した。

 6.リルチューレとはどういう意味か

  とある地方の古い言葉で”輝き”を意味している。


 片づけが済むとリルチューレの2人は分厚いマントを着込み、店主に一礼すると店の扉をくぐって寒風の吹きすさぶ夜の街の中に消えていきます。
 この時、冒険者達の内のシーフなどが2人を尾行することにしたのならば、尾行と忍び足(共に目標値=10)の2つのチェックに2つとも成功しなければなりません。この2つのチェックに成功すれば、そのキャラクターはリルチューレの2人が西市街の薄汚い通りにある「金の延べ棒」という名の小汚い宿屋へと入っていくのを目撃できます。

第8幕 金の延べ棒(シナリオポイント+10)


 2人の後を追って「金の延べ棒」に入ると、一階の酒場には酔いつぶれてテーブルに突っ伏したまま寝てしまった数人の男達が居るだけで、2人は居ません。店の主人に金を掴ませ(100ガメル程度が適当でしょう)2人が宿泊している部屋を教えてもらい部屋の前まで行くと(忍び足 目標値=12)部屋の扉越しにくぐもった話し声が聞こえてきます。PCがここで聞き耳 目標値=10のチェックに成功すると男と女(アランとリタ)が小声で言い争っているのが聞こえてきます。
 女は「もうこんなことやめてよ」だの「だまされてるのよ」だのと言い、男の方は「うるさい」とか「おまえは忘れたのか」などと言い返しているのが切れ切れに聞こえてきます。
 この時にさらにPCに忍び足のチェック(目標値=13)をさせてください。失敗すると男が「だれだ!」と言っていきなり扉を開けてきます。成功すれば2人はさらに暫く言い争いを続けた後、明かりを消して眠ってしまいます。

第9幕 謎の魔術師


 どちらにせよPCが「金の延べ棒」から「さすらいの旅人亭」へ戻ろうとすると、帰り道の薄暗がりの中から突然声をかけられます。気が付くと数人の男達に取り囲まれていて、どこにも逃げ道はありません。男達は全員マントのフードを目深にかぶっていることと暗闇のため人相は分かりませんが、その手に月光にぎらりと光る剣が握られているところを見ると、友好親善使節団でないことは一目で分かります。
 男達はPCの前後(左右は路地の壁)に7〜8人おり、じりじりとにじり寄ってきます。PCが応戦するか逃げるかしようとすると、男達は一斉に襲いかかってきます。
 と、突然暗がりから上位古代語の詠唱が聞こえ、PCは急激かつ強力な眠気に襲われ(精神抵抗の目標値=20)ついには目の前が真っ暗となってしまいます。 
 このPCは明け方近く、自分が「さすらいの旅人亭」の酒場でテーブルに突っ伏しつて目を覚まします。(もし、他の冒険者達の誰かが、PCが戻ってくるまで夜通し酒場で起きていることにしていた場合、このPCはさすらいの旅人亭の扉の前で地面に倒れたまま目を覚まします。つまり、誰がこのキャラクターをこの酒場まで運んできたのかはついぞ分かりません)

第10幕 大図書館(シナリオポイント+3)


(*この章は、冒険者達がファラリス教団について調査を行うことにしていないと発生しません)

 翌朝、目を覚ましたPC達が朝食を食べながら、ファラリス教団についてどのように調査をするか話し合っていると、店の主人がパイプを吹かしながら何か調べ物がしたいのなら「聖なる丘」近くに建つ「大図書館」へ行ってみるといい、と教えてくれます。
 この最近完成した白大理石の大図書館は、王国とファリス最高神殿が共同管理する公共施設で、市民なら誰でも無料で、市民でなくても入館料20ガメルさえ払えば誰でも利用することが出来ます。
 この図書館は、博物館をも併設していて、全国を旅している聖戦士達や、アレクラスト中のファリスの信徒達から寄進された、大量の書物、美術品、貴重品などが展示されており、蔵書数70万冊、展示品数2000点以上を誇る巨大な建築物で、ファーズっ子達の自慢の種になりつつあります。
 冒険者達が店の主人の助言に従って「大図書館」へ行ってみると、噂に違わぬ荘厳な建築物であることが分かります。
 PC達が入館料1人20ガメルを支払って中にはいると、巨大な円形ホールには無数の木のベンチと、簡素な木製の机が並べられており、神学を勉強しているらしき、修道士や、建築学の本を読み耽っているドワーフ、下位古代語について勉強しているセージなどで混雑しています。
 大図書館はジャンル別に収蔵書物が分類されており、玄関ホールの案内板によるとこの図書館に収蔵されている本のジャンルは、建築学、美術、工芸、神学、歴史、考古学、天文学、薬草学、地質学、地理、気象、文学、言語学、博物学、植物学、精霊学、文化、異国史、魔法学、各国の王家及び貴族の血統、紋章学、アノス公文書…とそれこそオランの賢者の学院と比較しても遜色のない幅広いジャンルに渡っています。
 従ってこの大図書館で調べ物をするためには、何について調べるのかよく検討して絞り込んでおかないと、膨大な書物を前にして途方に暮れることになります。
 この図書館で調べられるのはおおよそ以下のようなことで、1つのことを調べるのに4時間の時間とセージ技能+知力ボーナスを基準とした目標値=10のロールに成功することが必要です。(失敗した場合、全く見当違いな本を調べ回ったあげく4時間も時間をつぶしてしまいます。このロールには平目でも挑戦できます)

 1.闇の血粛清事件について

   闇の血粛清事件について、膨大な量のアノスの公文書や地方史、個人の回想録などから調べると、今を去ること20年前の新王国歴502年の早春、当時のキングスヒル教区の領主にして教区司教だったロナウド・アルシャーン卿が邪教(ファラリスと目されているが確たる証拠は無し)にたぶらかされ、ダーク・エルフの血を引くセルフィーナと言う名前のハーフ・エルフを妻とし、2人の子供(男の子と女の子)までもうけていた事が当時キングスヒルの侍祭の地位にあったウォルター・カーティス(現キングスヒル教区司教)の最高神殿への告発で明らかになった。

   基本的にファリスの聖職者は結婚が認められておらず、また司教の地位にある者がよりにもよって邪悪なダーク・エルフの血を引く娘を妻としていたことが重要視され、早速神殿が組織した治安維持部隊がキングスヒルへ差し向けられた。(当時の部隊長はエリック・チェスター)

   治安維持部隊が屋敷を包囲し、ロナウド・アルシャーン及びその妻セルフィーナの大司教達による審問会への出頭を命じたが、アルシャーン卿がこれを拒否。治安維持部隊には出頭を拒否した場合、直ちに処刑せよとの命令が下っていたため、すぐさま屋敷ごと火を付けられた。(ただしこの記述には異論もあり、当時の街の住民の証言では、出頭命令など出さずにいきなり屋敷に火を付けたのだ、との記述のある文献も存在する。ただし、この件については公式文書には一切記録されていない)

 また、事件後焼け跡からは、アルシャーン卿及びセルフィーナとおぼしき人骨は発見されたものの、子供達(長男エセルバート当時6歳 次女アイナ当時1歳)と思われる遺骨は、ついに発見できなかった。アルシャーン卿及びセルフィーナの遺骨は粉々に砕かれ屋敷の焼け跡にばらまかれた。とのことである。


 2.共鳴弦を持つハープについて

 PC達が共鳴弦を持つハープについて調べると、以下のような伝承句へと行き当たります。

何人にも聞こえぬ感心の曲あり

   旋律にして 旋律にあらず

   音にして 音にあらず

   聞けるもの無し

   魂の深淵に囁きかけ

   聞く者と 聞かされる者とをとらえる

一つの者を 二つに裂き

一つを表し 一つを隠す

 隠されたものは聞こえぬ鍵により現る

曲であり 旋律であり 音である

   聞こえるが 聞けるもの無し

   古の吟遊詩人も知らぬ呪歌の如く存在せり


 3.忘却の湿原のリザードマンについて

   アノスの東部に広がる広大な湿地帯は別名「忘却の湿原」と呼ばれ、人間で(学術目的や調査目的を別として)足を踏み入れる者はいない。この広大な湿原には確認されているガルファ族をはじめとしていくつかの蛮族の集落がある。いずれの部族もドラゴンを神と崇めており、竜語魔法の使い手もいるようである。

   また、この湿地帯にはノーブル・リザードマンを頂点とする数百匹単位のリザードマンの大集落があり、しばしば(もっとも最近のものでは新王国歴488年のミラルゴに対する大侵攻があげられる)草原の国ミラルゴや、ここアノスにも侵攻してくる。

   リザードマン達は水竜(ウォーター・ドラゴン)と呼ばれるレッサードラゴンを飼い慣らし、これらの侵攻の際に利用することもある。とのことである。


 4.巨人像について

   アノスの都市イストンの北、グロザムル山脈の山麓に佇む巨大な人型の像。推定全長(腰から下は地中に埋まっている)は16メートルと巨大で、胸部に五角形の窪みがある。

   魔法のかかった像であることは確認されているが、誰が、いつ、何の目的で製作したものかは全く分かっていない。1人の賢者の説によると、この像は古代王国期の土木作業用の巨大なゴーレムであり、いざというときには、戦争にも使用することが出来たという。その力は強大無比で空中都市レックスのための岩石を切り出したのもこの像の力によるものだと書かれている。

   この像は胸部の五角形の窪みに魔法の宝石を埋め込むことによって、活動しており、今現在、その宝石が外されているため活動停止状態になっており、再びその宝石が見いだされ、その胸に埋め込まれれば活動を開始するだろう、と書かれている。


 その他、たとえばファラリス教団についてなどを調べてみても一般的なこと(ファラリスは神々の戦いに於いて、主神ファリスに刃向かった邪悪な暗黒神の頭目であり、その教えは邪悪そのものであり、信徒達は進んで邪悪な行いをする。例:ファン王国を滅亡させた闇の大司祭クロークの事件など)しか分かりません。ちなみに、大図書館に収蔵されている書物は、いずれも貸し出しできません。
 また、大図書館に収蔵されていて冒険者達が閲覧できる書物はすべて、危険な知識や国家の機密に関する事項などを含まない、一般的な書物ばかりです。ですから遺失の魔法に関する書籍や、邪悪な死霊魔術に関する書籍、国家機密の含まれる公文書などは閲覧することが出来ません。ちなみにこの大図書館の館長は、アノスの宮廷魔術師で法王レファルド?世の信任厚い”真実の探求者”レルドラムです。

第11幕 神官戦士リューン


(*この章は、PC達が大図書館で暗黒神について調べていないと発生しません)

 PC達が大図書館で調べ物を済ませ帰り支度を始めると、1人のファリスの神官戦士とおぼしき青年がやってきて、PCが読んでいた「暗黒神ファラリスとその教義」と言うタイトルの本に目を落とします。そして
「主神ファリスの名にかけて…」
「暗黒神の教えに興味があるのですか?」
と訊ねてきます。
 PCが、自分は街に暗躍するというファラリス教団の調査をしているのだ、と告げると神官戦士は「失礼します」と言って低く呟くように神聖語で神に祈り、暫く目を閉じていますが、やがてにっこりと微笑んで
「誤解をしてしまって大変失礼いたしました。確かにあなたからは邪悪な波動は感じられません。私は、ファリス神官戦士団に席を置くリューン・デクストラと申すものです。今回のファラリス秘密教団の調査を命じられ、捜査を行っています」
と、自己紹介をして
「どうやら私たちの求める物は、同一のようですね。これも主ファリスのお導きでしょう。いかがでしょう? 同じ物を求める者同士、お互い協力し合っては」
と持ちかけてきます。
 リューンはそのしゃべり方や物腰からも分かるとおり、優しく、公明正大で、礼儀正しく、正義感の強い若者です。自分の知っている情報を隠し、冒険者達の情報だけを奪って抜け駆けをするような卑怯な事は絶対に行いません。逆に冒険者達が情報を隠したとしても、疑うことはまずありません。
 もし、冒険者達がリューンの申し出を受けるのであれば、リューンは自分の持っている情報を全て教えてくれますが、正直大した情報は持っていません。リューンはいろいろと街中を調べて回りましたが、何の手がかりも得られず、やがてダメ許でもいいから大図書館で張り込みをすることにしました。と言うのも彼が考えるに、暗黒神の信徒達は必ずその教えを勉強するはずで、であればその教えの書かれた本を閲覧に来るだろうと考え、ここ3日ほど暗黒神関係の書物を閲覧する者がいないか見張っており、3日目にしてようやく見つけたのがPCだった、と言うわけです。
 もし、冒険者達がリューンと協力し合うことにすれば、以後神官戦士リューンがNPCとして冒険に加わります。(シナリオポイント+3)

第12幕 クローク村からの依頼


 もし冒険者達がファラリス教団の調査に興味を持たず、また持っていたとしても大図書館へ行かずに昼近くまで「さすらいの旅人亭」でぶらぶらしていると、正午近くになって分厚いマントに身を包んだ朴訥そうな若者が店に入ってきます。若者は店主にホット・パンチを注文すると椅子に腰を下ろして、キョロキョロと店内を見渡します。そして、冒険者達一行に目を留めると、さっと駆け寄ってきて
自分はキングスヒル郊外にあるクローク村という小さな村からやってきたテッドと言うもので、実はクローク村の外れにある森の中でつい3日ほど前にゴブリン達が目撃された。このまま放っておくと何か良からぬ事態に発展するに違いないから、村で相談して冒険者を雇うことにした。報酬は1600ガメル支払うから是非来て欲しい。
と、早口で一気にまくし立てます。テッドに報酬のアップを交渉しても無駄です。テッドは村のみんなから預かってきたなけなしの1600ガメル(と自分の財布の中の持ち金78ガメル)しか持っていません。
 この依頼を受けることにするのならば、テッドはいたく感謝して、翌朝一番で出発することにし、村へは自分が案内すると告げます。

 *もし、この依頼も拒否し、なおかつファラリス教団に対する調査もしないようでしたらゲームマスターは、この時点でゲームを終了し、プレイヤー達に本当に冒険シナリオを楽しむ気があるのかと、きつく説教してやってください。


第13幕 キングスヒル


 もしPC達が闇の血粛清事件を知っており、この20年前の事件に興味を持ってキングスヒルを訪ねることにして、酒場などでキングスヒルについての情報を集めると、キングスヒル教区は、ここファーズの都から西北の方角グロザムル山脈の麓へ向かって100?ほど行ったところにある高原地帯で、キングスヒルの街を中心として十個ほどの村を抱えた中規模の教区だとの情報を入手することが出来ます。
 ファーズの街を出て3日ほど歩くとキングスヒルの街に到着します。途中宿場村として、フェザー村、クローク村を経由する事になりますが、この時、野宿をするか宿屋へ泊まっていくか確認してください。もし、PC達がクローク村で宿泊することにするとクローク村の宿屋「森の木こり亭」の主人が、テッドが街から連れてきた冒険者達だと勘違いをして、さっさとゴブリン共を追っ払ってくれと言ってきます。冒険者達が人違いだと言うと、店の主人はがっかりしたような顔をします。もし、この時冒険者達が無報酬でゴブリン達を追っ払ってやると言えば(シナリオポイント+5)主人はいたく感謝して、宿代と食事代をただにしてくれます。この場合先に第14幕「クローク村」の章へ進んでください。

(*ちなみに、この時冒険者達一行にリューンが同行していると、必ず店の主人からの依頼をかって出ます。しかし、冒険者達一行が依頼を断ると、リューンは困っている村人を放ってはおけない、と言って1人で森へ向かいヴァラファール達に殺されてしまいます。もしリューンが死んでしまったらシナリオポイントを−10してください)

 キングスヒルの街は人口およそ3000人程度の中規模の街で、「水竜の角亭」と言う酒場兼宿屋(1泊朝食付40ガメル)があります。酒場や街の通りなどで人々に闇の血粛清事件について聞き込みをすると大図書館で得られる情報に加えて、ロナウド・アルシャーン司教が公私ともに優れた立派な人物(と、少なくとも教区の人々からは)と思われていたことと、アルシャーン家の屋敷跡はキングスヒルを見下ろす郊外の小高い丘の上にあること、今では殺された(処刑された)アルシャーン卿及びセルフィーナとその子供達の亡霊が徘徊するという噂があり、誰も近寄るものはいないこと、との情報を入手することが出来ます。
 もしPC達がアルシャーン家の屋敷跡に興味を持ち(リューンが同行している場合、亡霊とは聞き捨てなりません。と言ってつかつかと乗り込んでいきます)行ってみると屋敷跡には焼け崩れた梁や柱の残骸、ガラスの破片や崩れた石壁などが残っているだけです。
 しかしレンジャー技能を持つキャラクターが目標値=11の足跡追跡のロールに成功すれば、崩れた屋敷跡の地面に真新しい女の足跡を発見できます。この足跡を追っていくと屋敷跡から少し離れた場所に小さな石が2つ並べて置かれている墓とおぼしき塚があり(最近掘られたものだと分かります)その前には、まだ新しい花が供えられているのを発見できます。 
 死者に対する冒涜行為(リューンが同行していれば必ず止めます)と知りつつも、塚を掘り返した場合、浅い穴の中に砕けた古い人骨が埋葬されているのを発見できます。セージ技能による目標値=12のロールに成功すればこれらの人骨が、1つは人間の男のもので、もう1つはハーフ・エルフの女ものであることが分かります。(シナリオポイント−5)

第14幕 クローク村


 冒険者達がクローク村のテッドからの依頼の依頼を受けて(あるいは受けずに)クローク村へと到着するのは、ファーズを出発して2日目の夕暮れ近くになってからです。
 クローク村は周囲を鬱そうとしたクローグの森に囲まれた林業などで生計を立てている貧しい村で、人口80人程度の貧弱な小さな村です。村には街道沿いにただ一軒の酒場兼宿屋「森の木こり亭」があります。
 「森の木こり亭」の主人からの依頼にしろ、テッドからの依頼にしろ、ゴブリンを退治することにしたPC達が、村人や酒場の主人などからいろいろと話を聞くと、村でゴブリンを見た人物は2人であり1人は木こりで、もう1人は狩人とのことです。2人とも5日前の夕暮れ時に、村を囲むクーログの森の中で、数匹のゴブリンらしき赤褐色の肌をした子鬼を目撃したそうです。
 目撃者などに案内してもらい、森の中の目撃地点へ行ってみて、レンジャー技能を持つキャラクターが目標値=8の足跡追跡のロールに成功すれば、証言通り数匹(正確には4〜5匹)のゴブリンとおぼしき足跡を発見できます。
 日中などで充分に明るく、なおかつ目標値=12の足跡追跡に成功したキャラクターは、このゴブリン達の足跡を追って行くことが出来ます。ゴブリン達の足跡を追って2時間ほど森の奥へと進む(ゴブリン達は森の中の数十年前にうち捨てられたとおぼしき道を通っています)と、森の中の少し開けた場所に建つ荒れ果てた屋敷へとたどり着きます。

第15幕 森の奥の廃屋  ダーク・エルフ


 この屋敷を見てセージ技能を持つキャラクターが目標値=12の知識ロールに成功すると、この屋敷はおそらくアノスによって滅ぼされたハーム王国の貴族の狩猟用の別荘だろうことが分かります。
 屋敷に到着した時刻が夜だった場合、屋敷の2階の窓から明かりが漏れているのを発見できます。
 屋敷付近の地面にはゴブリンのみならず、人間の男、エルフの男とおぼしき足跡も発見できます。屋敷の入り口の扉の所には、見張りとおぼしき2匹のゴブリンが座り込みゴブリン語でなにやらべちゃくちゃと喋っているのが聞こえてきます。
 この時、ゴブリン語を理解できるキャラクターがいれば見張り達が「ヴァラファール」という名の人物の悪口をべちゃくちゃ喋っているのに気づきます。なおも聞き耳を立てていると、どうやらその「ヴァラファール」なる人物がここのボスであり、ダーク・エルフであるらしいことが分かります。そのうちゴブリン達の話の内容は、自分達がいかに多くのファリスの聖騎士達を倒してきたか、と言う(ほら)話に変わります。
 もしPC達が何の考えもなくゴブリン達に向かってけば、ゴブリン達はすぐさま大声を上げて敵襲を知らせ、屋敷の中へと逃げ込みます。以後屋敷の中では、待ち伏せと戦力の集中が行われ、PC達は不利な戦いを強いられることとなります。(シナリオポイント−5)

 



?玄関ホール

  2階までの吹き抜けになっており、中央部に、2階へ上がるための階段があります。1階の東南側と西南側の壁に薄汚れたオーク製の扉があり、いずれも鍵はかかっていません。

 2階渡り廊下には東北側と西北側の壁にそれぞれ、扉がありますが、こちらも鍵はかかっていません。


?応接室

  応接室です、割と新しいソファーなどが置かれており、明らかに新たに人の手が入っていることが分かります。


?娯楽・展示室

  娯楽・展示室です。カードテーブルや酒瓶の収められたキャビネット、薄気味の悪い剥製などが飾られています。

  酒瓶の収められているキャビネットには、目標値=12の鍵と、発見のための目標値=12(感知では16)、解除のための目標値=10の毒針の罠が仕掛けられてい ます。この毒針を発動させてしまうと、必ず1点のダメージを受け、続いて毒性値=15の抵抗ロールを行わなければなりません。この毒針に塗られている毒は、<ダーク・ブレイド>です。

キャビネットの中には上物のブランデーが2瓶、上物のウィスキーが2瓶入っています。


?脱衣室

  風呂にはいるための脱衣室です。清潔なタオルなどが棚に並べられている他は、何もありません。


?浴室

  浴室です。浴槽は綺麗に掃除されていて、何者かが最近使用していることが分かります。 


?便所

  トイレです。便器や汚物以外、何もありません。


?食堂

  大きな食堂で、巨大なダイニングテーブルと、その上に置かれた燭台などの他は変わった物はありません。


?厨房

  厨房です。最近使用されている形跡があり、野菜や肉、小麦粉などの食材や、鍋釜などの調理器具がきちんと片づけられており、大きな薪用のオーブンの脇には、薪なども束ねられています。


?使用人室

  使用人室です。狭い部屋にはベットや机などが置かれています。もし、PC達の侵入した時間が夜間であり、しかも侵入に気づかれていなければ、この屋敷で使用人として使われている男(暗黒神の信者)がベッドで眠っています。

  日中であり、侵入に気づかれていなければ、この部屋には使用人として使われて居る男が居り、ライト・メイスを掴むとPC達に襲いかかってきますが、形勢が悪くなるとすぐに降伏します。


暗黒神の信者

 モンスターレベル=2

敏捷度=13 攻撃点=ライト・メイス:9

打撃点=6 回避点=10 防御点=5

 生命点/抵抗値=12/10

精神点/抵抗値=12/10

特殊能力=暗黒語魔法1レベル

(魔法強度/魔力=10/3)

 もし、既にPC達の侵入にヴァラファール達が気づいている場合、この部屋には誰もいません。


?使用人部屋

  ?の部屋と全く同じですが、この部屋のベットや寝具はぼろぼろに腐っており、使用された形跡はありません。この部屋には誰もいません。


?物置部屋

  窓がないため、明かりがなければ日中でも真っ暗な部屋です。壊れたベットの残骸や曲がった火掻き棒、柄の腐った薪割り斧などのがらくたが乱雑に放り込まれています。

?中庭

  中庭です。変わった物は何もありません。


?2階廊下

  PC達の侵入がヴァラファール達に気づかれていた場合、2階の廊下には、ヴァラファールの放ったシェイドのため真っ暗になっています。ヴァラファールやゴブリンなどの暗視の出来るモンスター達は、PC達を廊下の角などからショートボウなどで射撃してきます。

  これらの攻撃は、不意打ちとなるため、レンジャー技能を持つキャラクターが目標値=17の危険感知のロールに成功しない限り、必ず回避ロールに−4の修正を受け、さらに暗闇のため(暗視の能力を持つキャラクター以外)−4の修正を受けます。


  ヴァラファールの矢       ゴブリン達の矢

 攻撃力=12 打撃点=9+毒  攻撃力=9 打撃点=7

毒=毒性値13、麻痺、12時間持続

これらの矢の攻撃は、PC達がウィルオーウィスプや、ライトの呪文などで、暗闇状態を解消するまで続きます。


?書斎

  書斎です。扉には解除のための目標値=13の鍵がかかっています。書斎には大型のライティングデスクや、暖炉、マントルピース、書棚、キャビネットなどが置かれています。

 ライティングデスクの上には、まっさらな羊皮紙の束と、羽ペン、インク壺、飲みかけのブランデーの入ったグラス、ランタン、火口箱などが置かれており、机の引き出しには目標値=13の鍵がかかっています。さらに引き出しには発見のための目標値=13(感知では17)、解除のための目標値=13の毒針の罠が仕掛けられています。この毒針を発動させてしまうと、必ず1点のダメージを受け、続いて毒性値=15の抵抗ロールを行わなければなりません。この毒針に塗られている毒は、<ダーク・ブレイド>です。

 机の引き出しには、羊皮紙の巻物が何本かと、5000ガメルの入った大きな革袋が入っています。

  書棚には目標値=13の鍵がかかっています。さらに引き出しには発見のための目標値=13(感知では17)、解除のための目標値=13の毒針の罠が仕掛けられています。この毒針を発動させてしまうと、必ず1点のダメージを受け、続いて毒性値=15の抵抗ロールを行わなければなりません。この毒針に塗られている毒は、<ダーク・ブレイド>です。

 書棚には、<暗黒神ファラリスの教義と祭儀><初級死霊魔術実践><黒の祭祀><忘れられた神〜亡者の神ミルリーフ〜><漆黒の断章><魔女達の秘術〜黒ミサとサバトの系譜〜>などのろくでもないタイトルの本ばかりが並べられています。これらは全てろくでもない本ばかりですが、全て貴重な古書(下位古代語で書かれています)ですので1冊につき1500ガメル程度で魔術師ギルドや大図書館などに売ることが出来ます。

 キャビネットには目標値=13の鍵がかかっています。罠はかかっていません。キャビネットの中には、真っ黒な粘液の入った瓶(ダーク・ブレイド、知名度=10)、黄色い粉末状の粉の入った瓶(デッドリー・ダスト、知名度=9)、青い液状の物が入っている瓶(ブルー・ネイル、知名度=10)、透明な粘液の入った瓶(ミッドナイト・スクリーム、知名度=14)薄紫色の液体の入った瓶(ダーク・ブレイドの解毒剤、知名度=12)などが置かれています。どの瓶にも内容物を示すラベルの類の物は一切貼ってありません。


 * 羊皮紙の巻物

  鍵のかかった机の引き出しにあった羊皮紙の巻物は、全てクレイバーンなる人物からヴァラファールに宛てた書状(手紙)です。

  書状によると、クレイバーンなる人物は法王レファルド?世を暗殺する計画を立てているらしく、その為の計画が現在ファーズに於いて進行中であること、現在のところ計画はおおむね順調ではあるものの、”娘”の方があまり協力的ではないため「監視」が必要であること、暗殺の実行日は年に一度の北からの大風”グロザムルの息吹 ”の吹く日で、その日にはファーズの街で大暴動が発生する手はずになっており、その混乱に乗じて王城ホーリーハンマーに潜入し、暗殺を実行する計画になっているようです。

 ホーリーハンマーへ潜入する為に、既にクレイバーンはアノスの高官を買収しており、その辺のことは大丈夫であると請けあっています。また、書状によるとこの暗殺計画には某国の高官も協力してくれているので必ず成功するだろう。と書かれています。


?主室

  主室です。東側、南側共に扉には鍵はかかっていません。大型の机と6脚の椅子、暖炉などがあります。この部屋は主にヴァラファール達が作戦室として使用しています。机の上には、王城ホーリーハンマーの見取り図や法王の寝室への進入経路などを示した、羊皮紙などが並べられています。


?ゲスト・ルーム(北側)

  ゲスト・ルームです。扉に鍵はかかっていません。部屋の中にはベッド、机、書棚などがあります。机にはめぼしい物は入っていませんが、鍵のかかっている(鍵開けのための目標値=12)書棚には魔道書などが収められています。

  ベッドの上には、ヴェーナー神官のローブとメダリオンが乱雑に投げ出してあります。     


?ゲスト・ルーム(南側)

  部屋?とほとんど同じ作りですが、書棚には魔道書ではなくファラリス関係の書籍が並べられています。

  この部屋のベットにも部屋?と同じくヴェナー神官のローブとメダリオンが置かれています。


?主寝室

  この部屋は主寝室です。夜に明かりが漏れているのはこの部屋からです。ヴァラファール達に気づかれることなくこの部屋までたどり着いた場合、部屋の中から低く話し合う声が廊下まで漏れ聞こえてきます。ヴァラファール達に気づかれることなくこの部屋に侵入した場合は、この部屋にはヴァラファール、暗黒神の司祭、暗黒魔道師の3人が居ます。

 既にPC達の侵入がヴァラファール達に気づかれていた場合、状況によってこの部屋にはさらに2匹のゴブリンと1人の暗黒神の信者が加わります。彼らはPC達をこの部屋で待ち伏せすることにして待ちかまえています。

 また、この場合、戦闘が開始されてから5ラウンド後にさらに2匹のゴブリンと2匹のホブ・ゴブリンが扉から部屋へと侵入してきます。

 いずれの場合にせよ、ヴァラファール達(ヴァラファール、暗黒神の司祭、暗黒魔道師)は、旗色が悪くなると、ダークネスかシェイドの魔法を使って部屋を暗闇に包んだ後、ガラスを叩き割って脱出します。


ヴァラファール

 モンスターレベル=6

敏捷度=19 攻撃点=シミター:12

打撃点=9+毒 回避点=15 防御点=9

 生命点/抵抗値=10/13

精神点/抵抗値=17/18

特殊能力=魔法:精霊魔法6レベル

(魔法強度/魔力=16/9) 

 魔法:暗黒語魔法5レベル

(魔法強度/魔力=15/8)

 毒:毒性値13、麻痺、

 12時間持続


暗黒神の司祭

 モンスターレベル=3

敏捷度=14 攻撃点=ライト・メイス:10

打撃点=8 回避点=11 防御点=7

 生命点/抵抗値=14/11

精神点/抵抗値=14/11

特殊能力=魔法:暗黒語魔法3レベル

(魔法強度/魔力=12/5)


 暗黒魔道師

 モンスターレベル=3

敏捷度=15 攻撃点=メイジ・スタッフ:7

打撃点=5 回避点=7 防御点=5

 生命点/抵抗値=14/11

精神点/抵抗値=14/11

特殊能力=魔法:古代語魔法3レベル

(魔法強度/魔力=12/5)


?庭師小屋

  屋敷がまだ利用されていた頃に、庭師や馬の世話係が使用していた小屋です。今ではゴブリン達が生活の場として使っています。ゴブリン達の為に全ての窓に板が打ち付けられているため、日中であっても小屋の中は真っ暗です。

  小屋の中には、簡素な安物の木のテーブルや安酒の瓶、飼い葉桶と飼い葉、ゴブリン達が毛布代わりに使用している藁や、ゴブリン達の食べかす、汚物などがあります。小屋の中は、ゴブリン達の食べ残しや、汚物、ゴブリン達の体臭の臭いで鼻が曲がるほどの悪臭が漂っており、その悪臭は小屋の外まで漂ってきているので、すぐにこの小屋がゴブリン達に利用されていることが分かります。  

 この小屋の中には、2匹のゴブリンと2匹のホブ・ゴブリンがおり、日中であれば盛大ないびきをかいて眠っています。(無論、玄関前の見張りゴブリン達が大騒ぎをしていれば、目を覚ましてPC達がやってくるのを待ちかまえています)


 ホブ・ゴブリン×2

 モンスターレベル=3

敏捷度=12 攻撃点=簡素な棍棒:10

打撃点=10 回避点=11 防御点=7

 生命点/抵抗値=15/11

精神点/抵抗値=12/11


 ゴブリン×2

 モンスターレベル=2

敏捷度=13 攻撃点=ショート・ソード:9

打撃点=7 回避点=10 防御点=5

 生命点/抵抗値=12/10

精神点/抵抗値=10/9


?馬小屋

  馬小屋です。3頭の馬が居ます。馬たちはPC達が小屋へ入ってくると、落ち着かなげに蹄で床を掻き始めます。馬は神経質な動物ですので、PC達が金属鎧をがちゃがちゃさせたり、馬の身体に触ったりすれば、たちまちいななきを上げ始めます。


第16幕 クローク村再び


 冒険者達が、テッドか「森の木こり亭」の主人からの依頼で森の館へ赴き、全滅せずに戻ってくることが出来ればこの章となります。
 冒険者達が、森の奥の館からクローク村へと戻り「森の木こり亭」へ入ると、主人が暖かく迎えてくれます。もし冒険者達がテッドからの依頼を受けていなかった場合、この場面でテッドがすっかり意気消沈した様子で「森の木こり亭」へと入ってきます。そして主人に、結局街では冒険者達を見つけることが出来なかったと気落ちした様子で報告します。と、「森の木こり亭」の主人が晴れやかな顔でテッドに、この「勇敢で親切な冒険者達」がすっかり片づけてきてくれた。と事の顛末を説明します。これを聞いたテッドは、すっかり感激してファリスは僕をお見捨てにならなかったと神に感謝し、ついで冒険者達に丁重に礼を述べ報酬として1600ガメルを支払ってくれます。(無論、ファリスの神官戦士であるリューンが同行している場合、リューンは報酬を受け取らずに、冒険者達で分けてくれと申し出ます)
 テッドからの依頼でクローク村へとやってきた場合、テッドは喜んで報酬を支払ってくれます。
 さて、問題は(持って来られた場合)クレイバーンからの書状などをどうするのか、と言うことになりますが、PC達はこれらの書状を証拠品としてアノスの当局に引き渡し、暗殺計画を阻止することは当局に任せようとするかも知れません。しかしながらクレイバーンの書状にもあったとおり既にアノスの高官が買収されていて、それが誰だか分からない状況にあるため、冒険者達が提出したこれらの書状が、たまたまその人物の手に渡った場合、最悪握りつぶされてしまう可能性があります。
 しかも間の悪いことに書状にあった”グロザムルの息吹”の日は4日後であり、クローク村からファーズまでは、どんなに急いでも2日はかかります。
 つまり書状を当局者の手に委ねたとしても、当局者達が証拠を吟味し、計画を立てている間に決行日が来てしまうのです。従って、この計画を阻止するためにはPC達自らが動くほか無いことになります。

第16幕 素人芸術家


 冒険者達が森の廃屋で(最初から行っていない場合なども含みます)、ヴェーナー神官のメダリオンを入手しておらず、また入手していてもファーズのヴェーナー神殿を調べることを思いつかなければ、この章となります。
 冒険者達が「さすらいの旅人亭」の酒場で、食事をとっていると、1人の太っていて裕福そうな身なりをした中年の男が、店の扉をくぐって入ってきます。
 男はカウンターに腰を下ろし、黒ビールを注文すると店の主人にぶつぶつと愚痴をこぼし始めます。
 主人が男に(男はこの店の常連らしく主人は気さくに話しかけます)
「どうしたい?ベクターの旦那」
と声をかけると、中年男は「どうもこうもあるか!まぁこいつを見てくれよ」と言うと手提げ袋の中から巻物状に巻かれた絵を取り出し、主人に見せると
「フィリップ、コイツをどう思う?」
と主人に尋ねます。主人は困ったような顔をして暫くためつすがめつしていますが、そのうちに頭を振ると
「オレにはどう見ても素人のいたずら書きにしか見えないね。ウチのガキのほうがまだ上手に絵を描くぜ」
と答えます。ベクターはどんとカウンターを叩くと
「まるっきりそうよ!全くとんでもねぇシロモノ持って来やがって!何が芸術神ヴェーナーの信徒だ!聞いて呆れるぜ!こんなガラクタばっかウチの店に持ち込みやがって、こちとらこんなガキの頃から美術品を扱ってきてんだ!美術品とのつきあいはウチのカカアより長えんだぜ、馬鹿にするなってんだ!」
と息巻くと、一気に黒ビールをあおります。
「ところがウチで使ってる、うすら馬鹿のピップのヤロウがオレの留守中に勝手にこんなガラクタを大量に買い込んじまったんだ。いくら使ったと思う?1500だぜ1500!年の瀬も近ぇってのに冗談じゃねぇよ!おおかたピップの頭の弱さにつけ込んだんだろうが、きたねぇ連中だよ!何が芸術神ヴェーナーだ!詐欺師ヤロウどもめ!フィリップ!!もう一杯くれ」
 主人は苦笑いしながらグラスに黒ビールのおかわりを注いでやると、ベクターを慰め始めます。
 勘の良い冒険者達ならば、この話を聞いてヴェーナー神殿が怪しいと思うかも知れません。もし、ベクターにヴェーナー神殿について訊ねれば、ベクターはヴェーナー神官達がごく最近(つい2ヶ月ほど前)にこの街にやってきたことや、ファーズ郊外の2年ほど前に廃れてしまったガネード神殿の跡地を買い取って生活していること、布教活動らしい活動はほとんど一切していないこと(このためベクターは、ヴェーナー神官達が間違いなく詐欺師の集団であると確信しています)、神殿を管理しているのがクレイバーンという名の中年の目つきの良くない司祭であることなどを教えてくれます。

第17幕 手紙(シナリオポイント−2)


 PC達が、ベクターなどの話を聞いてもヴェーナー神殿の調査を行わなかった場合、この章となります。その日一行が「さすらいの旅人亭」の自分の部屋へ戻ってみると、机の上に見慣れない筆跡の手紙が置かれています。
 手紙は流れるような共通語の筆記体でただ一言
「ヴェーナー神殿を調査しろ」
とだけ書かれています。署名などの類は一切ありません。

第18幕 ヴェーナー神殿


 冒険者達が様々な情報からヴェーナー神殿が怪しいとにらみ、実際にヴェーナー神殿に足を運んで調査を行うことにすると、この章となります。
 冒険者達一行が、郊外のヴェーナー神殿へとやってくると、ヴェーナー神殿から見覚えのある人物が出てきます。この人物はリルチューレのアランで相変わらずグランド・ハープを手にしています。アランは一行に気が付くと軽く会釈してそのまま立ち去ろうとします。もし、冒険者達が話しかければ足を止めて話しに応じますが、冒険者達がアランを拘束しようとしたり、厳しく問いつめればアランは、誤解を解くと言ってハープを奏で始めます。すでにアランのハープの虜になっているキャラクターは、もちろんのこと、ここで精神抵抗の目標値=15のロールに失敗したキャラクターはアランがそんなことをするはずがないと思いこまされます。そしてアランに危害を加えようとするキャラクターを取り押さえます。アランはこの隙に姿を消してしまいます。
 PC達がヴェーナー神殿に足を踏み入れると、中からヴェーナーの司祭と名乗る中年の目つきの鋭い男が応対に出ます。司祭はクレイバーンと名乗りどのような用件か訊ねてきます。神殿の礼拝堂には、あちこちに素人臭い絵画や彫刻などが並べられており、PC達がそのことについて質問すると、クレイバーンは皆信徒達の作品です、と愛想良く答えます。もし、PC達が素人臭いことに触れれば、クレイバーンは愛想笑いを浮かべながら
「芸術とは、なかなか他者には理解されないものです。我が神ヴェーナーもこう言っておいでです『芸術とは自らの心の為の物、人に媚びた芸術は真の芸術にあらず』と」
と平然と答えます。
 しかし話がファラリス教団や法王暗殺に及ぶと、クレイバーンは
「それは誤解です。いや、根も葉もない言いがかりです。一体何の証拠があって我ら兄弟を貶めるようなことをおっしゃるんですか」
と言ってきて、PC達が(持っていれば)書状を見せれば
「それは、私の名を騙ったものです。いや、同名の別人かも知れません。少々お待ちください、ペンとインクと羊皮紙を取ってきます。私が今ここで同じ文章を書きますから、それで筆跡を比べてみてください」
と言って自室へと向かおうとします。そのまま放っておくと、クレイバーンは自室へと入って行き、そのまま自室の窓から逃げ出してしまいます。
 もし、PC達がこれを阻止しようとすると、クレイバーンは、やおらフォース・イクスプロージョンの呪文を唱え、PC達を蹴散らすとそのまま脱兎の如く逃げ出してしまいます。
 シナリオ上クレイバーンは、ここで逃げ出してしまうことになっていますが、PC達が機転を効かせ(あるいは悪知恵を働かせ)て、どうしてもクレイバーンが脱出できないときは、ここで戦闘となります。ですがその際にも地下室から暗黒神の信徒達が現れてクレイバーンの脱出を手助けします。

第19幕 潜入!金の延べ棒(シナリオポイント+5)


 PC達がリルチューレの2人の宿が「金の延べ棒」であることを知っており、これを訪ねてみることにすると、この章となります。
 PC達が何時に「金の延べ棒」へ到着したかに関わらず、リルチューレの2人は部屋にはいません。
 シーフ技能を持つキャラクターが目標値=12の鍵開けのロールに成功すると、リルチューレの2人が利用している部屋に潜入することが出来ます。
 部屋の中には、旅で持ち歩くような品物の他には大した物はありませんが、リタの方の荷物の中(女物の下着や、化粧道具が入っているので分かります)に、鍵付の日記と濃い緑色の液体の入った瓶、それと「さすらいの旅人亭」で焚いていた、香の粉の入った瓶を見つける事が出来ます。
 セージ技能を持つキャラクターが、香の入った瓶の蓋を開けて中の香を調べ、目標値=16の知識ロールに成功すれば、この香がレッド・アイリスという名の非常に珍しい一種の麻薬であることが分かります。この香を焚いてその煙を吸入してしまった者は、被暗示性が異常に亢進して、暗示にかかりやすい状態となってしまいます。
 既に香の正体を知っていて、さらにセージ技能を持つキャラクターが、濃い緑色の液体を調べ、目標値=16の知識ロールに成功すれば、この液体が既にかけられている暗示を解除し、また催眠歌による催眠状態を防ぐ効果のある薬品であることが分かります。
 日記に付いている鍵は簡単なもの(目標値=8)で、鍵を開ければ内容を読むことが出来ます。

*リタ(アイナ)の日記

  日記の冒頭には、著者の署名がしてあり、美しい筆跡の東方語(マールダン)で「アイナ・アルシャーン」と書かれています。

  日記に目を通してみると、以下のようなことが分かります。

1.リルチューレの2人は、20年前の闇の血粛清事件で処刑された、ロナウド・アルシャーンおよび、その妻セルフィーナの2人の子供(エセルバートとアイナ)であること。

2.2人は事件後、旅の吟遊詩人に拾われ育てられたこと。

3.兄エセルバートは、両親の敵を討つべくその機会と手段を伺っていたこと。

4.4年ほど前、ある古代遺跡で共鳴弦に関する書物を手に入れ、共鳴と人間には聞こえない高周波によって聞く者を催眠状態に陥れ、操る技(一種の呪歌)を習得したこと。  

5.この技によって、両親の復讐を果たそうとする兄の元に、クレイバーンと名乗るファラリスの暗黒司祭が訪れ、催眠歌を利用した法王暗殺計画を持ちかけてきたこと。

6.この計画にアイナは反対したが、兄のエセルバートに結局押し切られ嫌々ながら協力せざるを得なくなったこと。

7.兄はともかくアイナ自身は、クレイバーンのことを信用していないこと。

8.何度も兄に翻意を迫ったものの、その度に、反論され結局説得できなかったこと。


第20幕 2つの道


 ここまでシナリオを進めてきて、PC達が取るべき行動は2つに1つとなることでしょう。(なにせ翌日は、”グロザムルの息吹”の日なのですから)
 1つは、リルチューレの2人を捕らえることであり、もう1つは暗黒神の教団の隠れ蓑となっている、街外れのヴェーナー神殿を襲撃することです。
 どちらの場合でも冒険者達一行にリューンが同行している場合、一旦治安部隊本部に戻り、10人程度の治安部隊を連れてくることが出来ます。

第21幕 アイナの説得(シナリオポイント+10)


 もしPC達がアイナの日記を読んでおり、アイナが1人で居るところを見計らって、アイナの説得を試みようとすればこの章となります。
 この広いファーズの街(何せ人口2万5千人の大都市です)で、たった1人の女性を捜すのは非常に困難な事ですが、主神ファリスのご加護なのか、もう日も暮れかかった頃に吹きすさぶ寒風の中、通りを俯きながら1人で歩いているアイナ・アルシャーンの後ろ姿を見つけることが出来ます。
 PC達がこっそりとアイナに近づき話しかけると、アイナは、はっとして顔を上げます。その顔は、悲哀と苦悩に青ざめているようにも見えます。アイナはPC達に軽く会釈をすると
「公演を聴いていらした方達ですね、何のご用でしょうか」
とかすかに震えながら言ってきます。その震えが寒さの為なのか、それとも恐怖によるものなのかは、PC達には分かりません。
 PC達が暗殺計画などについて話を始めると、そのブルーの瞳が衝撃を受けたように大きく見開かれ、ついで顔を両手で覆うとわななきながら嗚咽を漏らし始めます。
 アイナはすっかり観念したように、がっくりと肩を落とし、すすり泣きながら、自分がその計画に荷担していることを認めます。
 PC達が暗殺計画阻止のために協力してくれ、と持ちかけると、アイナはすすり泣きながら弱々しく首を振り、小さく「出来ません」と答えます。そして泣きながら
「だって私、兄を愛していますもの!私が罰を受けるのは構いませんけど、兄を裏切る事なんて出来ません!」
ときっぱりと言い放ちます。
 ここでPC達が上手く説得できれば(本当に兄さんを愛しているのなら、これ以上罪を重ねさせることなく止めてやるべきだなど)、アイナはPC達に計画の全て(クレイバーンという名のファラリスの暗黒司祭が全てを計画し、ヴァラファールという名のダーク・エルフなどがこの計画に加担しており、”グロザムルの息吹”の日にエセルバートとアイナが催眠歌を使って民衆暴動を起こし、その混乱に乗じてアノスの高官の手引きでホーリーハンマーに潜入して法王を暗殺する計画であること、某国の高官などもこの計画に荷担しているらしきこと、そして全ての計画の裏に某国の高官と名乗る黒ローブの人物が居るらしきことなど)を話し、PC達に協力して兄(エセルバート)を阻止しようと申し出ます。そして
「…わかりました、私が間違っていたのかも知れません。そうですね、本当に兄を愛しているのなら私はやっぱり兄を止めるべきなのでしょう…例え、それが兄の命を奪うことになったとしても…」
と、泣きはらした目できっぱりと告げ、PC達と共にエセルバートの元へと向かうことになります。

第22幕 襲撃!(シナリオポイント+20)


 冒険者達がアイナと共に、エセルバートの居る「金の延べ棒」へ向かう為に、すっかり日の落ちたファーズの街角を走っていると、突然、道の暗がりから分厚いマントを着込んだ3人の人影が一行の前に躍り出ます。3人の人影は皆、無言で毒とおぼしき黒い粘液の塗られた短剣を引き抜くと、
「やはり裏切ったな!このメス犬め!ここであの世に送ってやる!」
と叫んでアイナに向かっていきなり斬りつけてきます。

 刺客×3

 モンスターレベル=3

敏捷度=16 攻撃点=短剣:10+毒

打撃点=10 回避点=11 防御点=7

 生命点/抵抗値=15/11

精神点/抵抗値=12/11

特殊能力=毒:毒性値12、打撃力、10

 追加ダメージ4


 冒険者達一行がここで、刺客達を撃退して「金の延べ棒」へ向かうと、既に「金の延べ棒」はもぬけの殻で、どのような手段を使ったとしても消えたエセルバートを見つけ出すことは出来ません。(もし、PC達が第19幕から「金の延べ棒」でアイナとエセルバートが戻ってくるのを待ちかまえていたとしても、2人はこの日「金の延べ棒」へは戻ってきません)

第23幕 リルチューレを捕らえろ


 PC達が『第20幕2つの道』でリルチューレの2人を捕らえることを選択した場合この章となります。
 しかしながら、リルチューレの2人は既に翌日にそなえてファーズの市街にある秘密の場所に潜伏してしまっているため、PC達が例えどのような方法を試してみたとしても1日では、潜伏場所を特定することは出来ません。

第24幕 急襲!ヴェーナー神殿


 PC達が第20幕2つの道、でヴェーナー神殿を急襲することを選択した場合この章となります。
 冒険者達にリューンが同行している場合、状況によっては10人程度の治安部隊の兵士達がヴェーナー神殿の捜査に同行することとなります。
 PC達がヴェーナー神殿に突入すると、ヴェーナー神殿には誰もいません。しかしながらシーフ技能を持つキャラクターが、祭壇を調べ目標値=13の捜索のロールに成功すると祭壇の下に隠し扉(跳ね上げ戸)を発見することが出来ます。隠し扉の奥は地下への階段となっており、階段を下りると地下の秘密礼拝堂へとたどり着きます。
 地下秘密礼拝堂には、無数のろうそくに照らされた禍々しい暗黒神ファラリスの像が安置された祭壇があり、10人ほどの黒いローブを着た暗黒神の信者達が、翌日の計画の成功を期して、熱心に祈りを捧げています。しかしながら、この地下神殿にもクレイバーンの姿はありません。
 暗黒神の信者達は、冒険者達が突入してくると、しばし狂乱状態に陥りますが、すぐに手近にある武器を取って、反撃してきます。

 

暗黒神の信者×10

 モンスターレベル=1

敏捷度=12 攻撃点=ライト・メイス:8

打撃点=5 回避点=9 防御点=4

 生命点/抵抗値=12/9(死亡ライン−3)

精神点/抵抗値=12/9

特殊能力=暗黒語魔法1レベル

(魔法強度/魔力=10/3)

暗黒神の司祭

 モンスターレベル=3

敏捷度=14 攻撃点=ライト・メイス:10

打撃点=8 回避点=11 防御点=7

 生命点/抵抗値=14/11(死亡ライン−5)

精神点/抵抗値=14/11

特殊能力=魔法:暗黒語魔法3レベル

(魔法強度/魔力=12/5)


 暗黒神の信者達は、全員催眠歌の影響を受けているため、死ぬまで戦い、生け捕りにされた場合でも、絶対にクレイバーン達の居所を喋りません。(と言うか、彼らはクレイバーン達の居所を知りません)
 もし、PC達が日中にヴェーナー神殿にやってきており、クレイバーンを逃走させてしまっていれば、すでにこの神殿には人っ子一人居ません。

第25幕 ロドーリルの影(シナリオポイント+5)


 冒険者達がヴェーナー神殿に潜んでいた暗黒神の信者達を倒し、地下の秘密神殿を捜索すると、クレイバーンの私室の鍵のかかった机の引き出しに、この計画の立案書、資金援助の約束、計画失敗時の亡命の確約書などの書状が入っており、その全ての書状にロドーリル王国の王家の紋章が印されています。
 計画書によるとどうやら、クレイバーンにリルチューレの2人の事を教えたのはこの計画書を書いた人物らしく、エセルバートの持つ共鳴の呪歌による催眠歌は、特に人間の耳に聞こえない高周波によって、暗示を直接潜在意識に送り込むことが出来るため、この暗示は強烈で、また長い時間繰り返し暗示を送り込むことによって、ほとんど意のままに人間を操れるようになると言うことです。
 この特定の高周波は、特に高い尖塔や渓谷などで増幅され、強い風によってさらにその効果を倍増させるとのことです。

第26幕 グロザムルの息吹


 どのようなルートや方法を採ったにせよ、決行の日までPC達はクレイバーン達を捕らえる事はおろか、その潜伏先を知ることすら出来ません。
 ただし、どのように上手く潜伏したとしてもクレイバーン達が絶対に出てこざるを得ない場所が一つだけあります。それは、法王の住居である王城ホーリーハンマーです。 おそらくPC達は阻止限界点として、ホーリーハンマーの中庭でクレイバーン達を迎え撃とうとすることでしょう。
 そして、その日がやってきます。”グロザムルの息吹”の日が…。
 その日は、朝からどんよりと曇った天候で、グロザムル山脈からの強い北風が唸りをあげ始めます。正午近くには風は相当な強風となり、びゅうびゅうと唸りをあげてファーズの整然とした街路を吹き抜けていきます。
 風が強まるに連れて街では、あちこちで暴行事件や傷害事件が起こり始めます。やがて正午を過ぎる頃には街中での小さないざこざは、大規模な暴動へと発展していきます。街路にはめちゃくちゃに暴れ狂って手当たり次第にガラスや家屋を破壊する暴徒達があふれかえり、ついには治安部隊、衛兵隊の兵士まで暴徒達に加わるに至って、暴徒鎮圧のために騎士団が投入されます。
 PC達が耳栓をしてこの聞こえない催眠歌を防ぐか、アイナから手渡され(またはアイナの荷物から手に入れ)た薬品によって防いでいて、ホーリーハンマーの中庭でクレイバーン達を待ちかまえていると夕方近くになって、ホーリーハンマーの中庭にクレイバーン達が姿を現します。クレイバーン達は全部で3人(クレイバーン、エセルバート、見慣れないファリスの司教で、状況によってアイナ、ヴァラファール、暗黒魔道師が加わります)おり、PC達がクレイバーン達に近づくと、中の一人の見慣れぬファリスの司教は、ぎょっとした顔をしてそそくさと逃げ出します。この時、冒険者達一行にリューンが同行していれば、リューンは
「カーティス司教!!あなたが内通者だったのか!!」
と叫びます。

第27幕 説得


 PC達がアイナの説得に成功していて、冒険者達と同行しているのならばこの章となります。
 アイナは、クレイバーン達一行を目にすると、やおら
「兄さん!もう、馬鹿な真似はやめて!」
と叫んで、エセルバートの方へ走り寄ります。エセルバートはその声に、はっとしたように振り返り
「アイナ!」
と一声叫びます。アイナは目に涙を浮かべながら
「兄さんはその男にだまされているのよ!兄さんは自分のしたことを見たの!なんの…何の罪もない人たちを傷つけて…それじゃあ、父さんと母さんを殺した人たちと同じ事じゃない!そんなことして、父さんと母さんが喜ぶと思うの!」
とエセルバートに訴えかけます。エセルバートは一瞬、苦痛に顔をゆがめたような顔をしますが、すぐにその瞳に怒りをたぎらせて
「うるさい!!おまえは父さんや母さんがアイツらに…ファリスの連中にどんな目に遭わされたか忘れたのか!!父さんと母さんは生きながら焼き殺されたんだぞ!!何の…何の罪もないのに…オレはアイツらを許さない!!父さんと母さんの味わった苦しみをヤツラにも味遭わせてやって何が悪い!」
と、怒鳴り
「オレは…オレの目には今でもあの日の光景が焼き付いている。お前はまだ赤ん坊だったから覚えていないかも知れないが、オレの目にはハッキリと、オレの瞼の裏にハッキリと焼き付いているんだ!父さんと母さんが生きながら屋敷ごと焼かれる姿が!!」
と、言い放ちます。アイナはぽろぽろと涙をこぼしながら
「私は…私は、その日のことは覚えてない…でも、父さんと母さんのやさしさやぬくもりは、今でもハッキリと覚えているわ!!だから…だからお願いもうやめて!!兄さんの憎しみは、父さんと母さんのやさしさやぬくもりまで消してしまうわ!!」
と、エセルバートに訴えかけます。エセルバートはその言葉に、まるで短剣で胸をえぐられたかのように苦しそうな表情を見せ、瞳にぎらついていた憎悪の色が薄らぎます。と、クレイバーンが割って入り
「兄妹ゲンカはそれ位にしておくのだな。我々には大儀があるのだ!忘れたか!エセルバート!生きながら焼かれる両親の姿を!!」
とエセルバートに言います。エセルバートはその言葉で一瞬目を閉じ、そして再び目を開けると、やはりその瞳には憎しみの炎が燃えたぎっています。
「忘れるものか、クレイバーン!アイナ!邪魔をするな!邪魔をするならお前でも殺す!!」
そう言うエセルバートを見つめるクレイバーンは、勝ち誇ったような冷笑を浮かべ、アイナに向き直ると
「と、言うわけだお嬢さん。君に兄さんを傷つけることなど出来ないだろ?何せ君の兄さんは君を小さいときから、両親に代わって育ててきたのだからな。さぁ、分かったら君の後ろの冒険者達に手出しをしないように言うんだ」
と、自信たっぷりに告げます。しかしアイナは泣きはらした目で、キッとクレイバーンを睨むと
「できます!例え兄さんを殺すことになっても……だって私は、兄さんを愛していますから!」
と、決然と告げます。するとクレイバーンは怒りで顔をどす黒く染め
「ならば、まず貴様らから我が神、暗黒神ファラリスの生け贄に捧げてくれるわ!!」
と喚きPC達に襲いかかってきます。

第28幕 中庭の決戦


 どのようなルートを通ったにせよ、最終的にPC達はここホーリーハンマーの中庭でクレイバーン達との最終決戦に望むこととなるでしょう。

 クレイバーン

 モンスターレベル=8

敏捷度=17 攻撃点=ブロード・ソード:15

打撃点=14 回避点=16 防御点=12

 生命点/抵抗値=16/16(死亡ライン−10)

精神点/抵抗値=18/18

特殊能力=魔法:暗黒語魔法8レベル

(魔法強度/魔力=17/10)

 マジックアイティム=魔晶石(精神点10点)


 8レベルのダーク・プリーストであるクレイバーンには、PC達はかなりの苦戦を強いられることと予想されます。また、状況によってはこれに6レベルのダーク・エルフであるヴァラファールと、3レベルの暗黒魔道師、アイナなどが加わるためPC達はかなりの苦戦を強いられる事でしょう。
 しかしながら戦闘が始まると、PC達にどこからともなく、古代語魔法による援助(効果範囲が接触であるものは除きます)が加わります。(このさい、デス・クラウドや強力な攻撃魔法によってクレイバーン達を直接攻撃して倒してしまうようなことは極力避けてください)
 クレイバーンが先に倒され、まだヴァラファールが生き残っていればヴァラファールは、シェイドなどの呪文を使ってPC達の目をくらませ、なるべく逃走を図ろうと試みます。また、クレイバーンが意識不明の状態で生き残っている場合には、必ず何処ともなくエネルギーボルトの魔法が飛んできて、クレイバーンにとどめを刺します。
 もし、PC達がアイナの説得に成功しているのならば、この戦闘中もアイナは兄であるエセルバートの説得を続け、その説得によって激しく動揺したエセルバートは、1度ならずアイナへの攻撃をためらいます。これに気づいたクレイバーンは邪魔なアイナを始末しようと、アイナを殺そうとします。
 しかしクレイバーンの長剣の切っ先がアイナを貫こうとしたまさにその瞬間、エセルバートは何かがはじけたように
「アイナ!!」
と叫ぶと、クレイバーンの長剣の先に身を躍らせ立ちふさがります。
 呆然と立ちすくむアイナの眼前でクレイバーンの長剣は、エセルバートの身体を貫き、肉と骨を切り裂く音と共に背中から突き出ます。(この瞬間はクレイバーンがもっとも無防備になる瞬間ですので、PC達が攻撃を行うのならばクレイバーンは、回避に−4の修正を受けます)
 エセルバートはクレイバーンの長剣が引き抜かれると、音もなくその場に崩れ折れます。アイナは、しばしその場に凍り付いたように立ち尽くしていますが、やがてのろのろとその場にしゃがみ込み
「兄さん……?」
と呟きます。そして、急に
「兄さん!兄さーん!!」
と叫ぶと、必死にエセルバートを揺り起こそうとします。

第29幕 大昔の子守歌(シナリオポイント+30)


 PC達がアイナの説得に成功しており、エセルバートが中庭の決戦でアイナをかばっているとこの章となります。
 PC達がクレイバーンを倒し、血の海に倒れているエセルバートの元へ行くと(その出血の量を見れば、例え神の力を持ってしても、エセルバートの命を現世にとどめておくことは不可能であることが分かります)、アイナは血の海に仰向けに横たわっている兄の頭を膝の上に抱えて泣きじゃくっています。
「兄さん…兄さん、死なないで…私を独りぼっちにしないで…」
アイナの流した涙がエセルバートの額にはらはらと落ちていきます。エセルバートは、うっすらと目を開けると、囁くような小さな声で
「オ…オレは、自分の憎しみによって、父さんと母さんの愛を見失ってしまっていた……父さんと…母さんの愛はオレの中に生きていたのに…オレは自らの憎悪で…父さんと母さんを永遠に失ってしまうところだった……父さんは最後に、オレに言ったんだ…妹を…アイナを守ってくれ、と………泣くなアイナ…兄さんは父さんとの約束を守ったんだ…………さよなら、アイナ……兄さんは父さんと母さんの所へ行くよ……あったかい、ぬくもりの中へ……昔の…よ…う…に………………」
と言うと再びその目を閉じ静かに息を引き取ります。アイナは泣きながら、最後に兄の手をしっかりと握ると、エセルバートの躯の側に転がっているグランド・ハープを手に取り、目を閉じて弦をかき鳴らすと、静かに澄んだ声で大昔の子守歌を歌い始めます。その歌声は時々悲しみで震えますが、しっかりとしたものでその甘く、郷愁をかき立てる暖かいメロディーは、グロザムルの息吹に乗って街中を駆けめぐっていきます。
 と、人々は徐々に正気を取り戻していき、やがてそのメロディーは街中を暖かい温もりで包み込んでいきます。そう、ちょうどまだ幼い頃に幼子が母親の腕に抱かれているかのように……………
 しかし、その時PCの1人は、王城の城壁の上に1人の黒ローブの魔法使いが、吹きすさぶ寒風にローブをはためかせながら立っているのを、一瞬、目にしたような気がしたのです………

第30幕 狂乱のファーズ


 PC達がアイナの説得に成功しておらず、中庭の決戦でアイナ達を倒してしまった場合、この章となります。

 PC達がアイナとエセルバートを倒しても暴動は収まらず、それどころかかえって拡大していきます。PC達(とリューン)は、街の人々の正気を取り戻させるため、夜遅くまで疲れた身体にむち打って、サニティをかけてまわらねばなりません。
 ファーズで起こった大暴動は、PC達とファリス神殿の必死の活躍にも関わらず、その日の夜遅くまで続き、市街の10分の1が焼失、100名以上の死者と1000名以上の負傷者を出す大惨事となってしまいます。

第31幕 ある結末/宮中晩餐会


 大昔の子守歌を通っているとこの章となります。

 冒険者達一行が、事の顛末をファリス神殿や当局に報告し、クレイバーン達の陰謀の証拠として、ロドーリルからの書状やクレイバーン達の書状などを提出すると、ファリス神殿はいたく感激して、PC達の功績を認め、その労をねぎらうため、宮殿で開催される特別晩餐会に是非出席してもらいたいと申し出られます。この申し出を受ければ(断る理由はないと思いますが…)全員が王城ホーリーハンマーで開催される、特別晩餐会の主賓として正式に晩餐会に招待されます。
 アイナの身柄は当局によって拘束され、ファリスの法に則って(暗黒神ファラリスの陰謀に加担した罪により)正式な裁判に掛けられます。この時、PC達がアイナをこっそり逃がそうとしてもアイナは、罪を償いたいと言って、きっぱりとその申し出を断ります。この際、PC達も証人として供述書を提出させられ、かつ、光の神々にかけて虚偽や偽りのないことの宣誓もさせられます。
 さて、PC達は宮中晩餐会に出席することになりますが、もし宮中晩餐会に着ていく服がないと言うようなキャラクターがいれば、噂を聞きつけたファーズの街の一流の仕立屋が、「さすらいの旅人亭」へわざわざ出向いてきて、高価なシルクのドレスや、典礼用の純白の地に金糸の縁取りの入ったマント、礼服などを全て無料で仕立ててくれます。
 また「さすらいの旅人亭」の主人は「ウチの店から英雄が出た」と鼻高々で、宿泊費用と食事代を全て無料にしてくれます。(が、店を訪れる人々が来るたびに引っ張り出され延々その冒険談を語らされます。その間中店の主人は、まるで自分もその冒険に協力したかのように自慢げにうなずいています)
 晩餐会の当日は、夕方近くになって豪華な2頭立ての4輪の純白の宮廷馬車が「さすらいの旅人亭」の前に迎えにやってきます。
 PC達が馬車に乗り込むと、馬車は「聖なる丘」に聳える白亜の王城ホーリーハンマー目指して駆け出します。
 PC達が王城に到着すると、PC達は法王の賓客として、丁重ではあるもののやや堅苦しい歓待を受けます。晩餐会場である舞踏会場には既に100人近いアノスの高官達が集まっており、ファンファーレと共に入場するPC達を拍手と共に出迎えてくれます。
 会場には、正面の上座に法王用の玉座が設えてありますが、法王その人の姿はまだありません。PC達は法王が臨席するまでの20分間、アノスの高官達(貴族、大司教、騎士団長など)の握手と社交辞令の攻勢にさらされます。
 20分ほどすると会場に”法王”レファルド?世が入場し、会場に列席する全員が深々と礼をして、その着座を待ちます。
 法王が着席すると、ファリスの法衣を着た法務院長が法王の前に進み出て、一礼すると
「法王猊下、恐れながら申し上げます。此度の事件に関しまして、罪人達に対する判決と、刑罰が確定しました由、ここにご報告申し上げます」
と述べます。これは多分に儀礼的なもので、基本的に全ての罪人に対する裁判は、全て法王の許可の下、行っているのです。
 法務院長は続けて、懐から羊皮紙の巻物を取り出すと、参列者達に向かって朗々と読み上げ始めます。
「一つ、此度の事件に関して、暗黒神ファラリスの教団に協力し、恐れ多くも法王猊下の命をねらう企てに参加し、王国の秩序と、ファリスの法と正義を踏みにじった嫌疑を掛けられたる、ウォルター・カーティスは、これを有罪と認める。ファリスの名の下にその司教号を剥奪し、死刑に処すものとする」
法務院長はさらに続けます
「一つ、此度の事件に関して、暗黒神ファラリスの教団に協力し、恐れ多くも法王猊下の命をねらう企てに参加し、王国の秩序と、ファリスの法と正義を踏みにじった嫌疑を掛けられたる、アイナ・アルシャーンは…」
ここで法務院長は、一旦声を切り、ぐるりと参列者一同を見渡します。そして、再び羊皮紙に目を落とすと
「これを無罪とする」
と宣言します。途端に参列者達からは驚きの声が漏れます。と、法王レファルドIV世はこれを制してよく通る静かな声で話し始めます。
「我らの親愛なる神の子、アイナ・アルシャーンは、確かにこの事件に関係していた。しかしながら、それは兄を愛する気持ちから生じたものであり、この事件を収拾するに当たっての功績も大きなものがあった。これは正義の精神にかなうものであると考えられる。確かに我らの法に従えば、彼女は疑いようもなく有罪であり、1つの功績によって1つの罪を減じるのは公正な正義の観点からは、逸脱した考えと言えることと思う。しかし、我々人間は常に法によって拘束され束縛し続けられなければならぬものではない。正義とは法に宿るものではないし、決まった形のあるものでもない。もしそうであれば、我々は果てしなく硬直化した正義のために多くの血を流すこととなるだろう。なぜなら正義とは、各々の心と行いによって決められるものであり、法とは、その正義の精神を形として表したものに過ぎぬからだ。我々正義の体現者たるファリスの神官達は全て心に留めて置いて欲しい、正義とは法に宿るのではなく、まさにそのまったき心と行いによって、初めてなされるものであると言うことを」
参列者達はしばし無言で、法王の言葉を考えているようですが、やがて万雷の拍手となります。
 その後、法務院長は次々と判決を読み上げていきますがこれは全て死亡しているものです。「一つ、暗黒神ファラリスの高司祭であったバークス・クレイバーン、主犯として有罪、死刑。一つ、暗黒魔道師であり共犯であったカーツ・サリバン、有罪、死刑。……」
 そして最後にエセルバート・アルシャーンの無罪が宣言され、この処置がその人生の最後に一人の少女を救ったためであることが告げられます。
 また、法務院長は20年前の事件である”闇の血粛清事件”が、キングスヒルの司教の座をねらった、当時キングスヒルの侍祭の地位にあったウォルター・カーティスによる冤罪であった事を告げ、当時のキングスヒル司教ロナウド・アルシャーン及びその妻セルフィーナの無罪と、ロナウド・アルシャーンに対する剥奪された司教号が返却される事が高らかに宣言されます。法王はここで、この冤罪事件が発生した背景について触れ、いかに硬直化した正義が悪に付け入れられるもととなるか、と言うことを告げ、当時のアノスの当局者達が、ダークエルフの血を引いていると言うだけで邪悪と決めつけ、自らの心の目で正義を確かめることをしなかったことが、この事件と悲劇を招いてしまったことを諭します。そして、法王としてその罪をファリスに懺悔します。
 その後、晩餐会となりPC達はこの度の事件を解決に導いた功績により、法王から報奨金として40000ガメル、またその功績をたたえて、全員にファーズI世功績十字章と言う勲章が授与され、”聖戦士”の称号が贈られます。
 この際、冒険者達一行にリューンが同行していた場合、リューンも受章の対象となりますが、リューンは畏まって、「わたくしは、彼らに同行しただけに過ぎませんので何の功績もございません。自ら功績をたてたわけでもありませんのに、そのような名誉ある章をいただくわけには参りません。」と言って辞退します。
 そして、冒険者達一行の功績をたたえる乾杯となり、飲めや歌えの宴会へとなだれ込みます。その宴会の席上、今回の事件の裏に、西北の軍事国家ロドーリルの影があることが語られ、”光の騎士団”の騎士達や参列者の間からは、ロドーリル討つべしとの声が高まり、もしPCの中にファリスの神官戦士がいれば、”光の騎士団”へとスカウトされます。(別に受けてもうけなくても構いません)
 やがて始まった、吟遊詩人が奏でる冒険者達一行の活躍をもとにした歌と共に、晩餐会は、その夜遅くまで続くのでした……

第32幕 もう1つの結末/宮中晩餐会


狂乱のファーズを通っているとこの章となります。

 冒険者達一行が、事の顛末をファリス神殿や当局に報告し、クレイバーン達の陰謀の証拠として、ロドーリルからの書状やクレイバーン達の書状などを提出すると、ファリス神殿はいたく感激して、PC達の功績を認め、その労をねぎらうため、宮殿で開催される特別晩餐会に是非出席してもらいたいと申し出られます。この申し出を受ければ(断る理由はないと思いますが…)全員が王城ホーリーハンマーで開催される、特別晩餐会の主賓として正式に晩餐会に招待されます。
 さて、PC達は宮中晩餐会に出席することになりますが、もし宮中晩餐会に着ていく服がないと言うようなキャラクターがいれば、噂を聞きつけたファーズの街の一流の仕立屋が、「さすらいの旅人亭」へわざわざ出向いてきて、高価なシルクのドレスや、典礼用の純白の地に金糸の縁取りの入ったマント、礼服などを全て無料で仕立ててくれます。
 また「さすらいの旅人亭」の主人は「ウチの店から英雄が出た」と鼻高々で、宿泊費用と食事代を全て無料にしてくれます。(が、店を訪れる人々が来るたびに引っ張り出され延々その冒険談を語らされます。その間中店の主人は、まるで自分もその冒険に協力したかのように自慢げにうなずいています)
 晩餐会の当日は、夕方近くになって豪華な2頭立ての4輪の純白の宮廷馬車が「さすらいの旅人亭」の前に迎えにやってきます。
 PC達が馬車に乗り込むと、馬車は「聖なる丘」に聳える白亜の王城ホーリーハンマー目指して駆け出します。
 PC達が王城に到着すると、PC達は法王の賓客として、丁重ではあるもののやや堅苦しい歓待を受けます。晩餐会場である舞踏会場には既に100人近いアノスの高官達が集まっており、ファンファーレと共に入場するPC達を拍手と共に出迎えてくれます。 会場には、正面の上座に法王用の玉座が設えてありますが、法王その人の姿はまだありません。PC達は法王が臨席するまでの20分間、アノスの高官達(貴族、大司教、騎士団長など)の握手と社交辞令の攻勢にさらされます。
 20分ほどすると会場に”法王”レファルドIV世が入場し、会場に列席する全員が深々と礼をして、その着座を待ちます。
 法王が着席すると、ファリスの法衣を着た法務院長が法王の前に進み出て、一礼すると
「法王猊下、恐れながら申し上げます。此度の事件に関しまして、罪人達に対する判決と、刑罰が確定しました由、ここにご報告申し上げます」
と述べます。これは多分に儀礼的なもので、基本的に全ての罪人に対する裁判は、全て法王の許可の下、行っているのです。
 法務院長は続けて、懐から羊皮紙の巻物を取り出すと、参列者達に向かって朗々と読み上げ始めます。
「一つ、此度の事件に関して、暗黒神ファラリスの教団に協力し、恐れ多くも法王猊下の命をねらう企てに参加し、王国の秩序と、ファリスの法と正義を踏みにじった嫌疑を掛けられたる、ウォルター・カーティスは、これを有罪と認める。ファリスの名の下にその司教号を剥奪し、死刑に処すものとする」
その後、法務院長は、この事件に関わったものの名を次々に読み上げて行き、全員(既に死亡しているものを含めて)の死刑が宣告されます。
 その後、晩餐会となりPC達はこの度の事件を解決に導いた功績により、法王から報奨金として40000ガメル、またその功績をたたえて、全員にファーズI世功績十字章と言う勲章が授与され、”聖戦士”の称号が贈られます。
 この際、冒険者達一行にリューンが同行していた場合、リューンも受章の対象となりますが、リューンは畏まって、「わたくしは、彼らに同行しただけに過ぎませんので何の功績もございません。自ら功績をたてたわけでもありませんのに、そのような名誉ある章をいただくわけには参りません。」と言って辞退します。
 そして、冒険者達一行の功績をたたえる乾杯となり、飲めや歌えの宴会へとなだれ込みます。その宴会の席上、今回の事件の裏に、西北の軍事国家ロドーリルの影があることが語られ、”光の騎士団”の騎士達や参列者の間からは、ロドーリル討つべしとの声が高まり、もしPCの中にファリスの神官戦士がいれば、”光の騎士団”へとスカウトされます。(別に受けてもうけなくても構いません)
 やがて始まった、吟遊詩人が奏でる冒険者達一行の活躍をもとにした歌と共に、晩餐会は、その夜遅くまで続くのでした……

第33幕 エピローグ1〜別れと旅立ち〜


 大昔の子守歌を通っているとこの章となります。

 宮中晩餐会から2日後の午後、冒険者達一行はファーズの城門の外で、アイナと別れを告げることとなります。
 辺りには晩秋の柔らかい日差しが降り注ぎ、グロザムル山脈から吹き下ろす冷たい北風を和らげてくれます。
 アイナは少し哀しみを含んだ穏やかな眼差しで、じっと青く聳える山々を見つめていますが、やがて一行の方を振り返ると、風に髪をなびかせながら一礼します。
「今回の件では、いろいろとありがとうございました。おかげで父と母と兄の名誉を取り戻すことが出来ました」
アイナはそう言うと、傍らに止めた荷馬車の中に積んである、兄エセルバートの亡骸の収められた簡素な棺に目をやります。
 PC達の誰かが(あるいは、もし居ればリューンが)、エセルバートの蘇生を”法王”に頼んで執り行ってもらおうかと申し出ると、アイナは悲しげに微笑みながら首を振ります
「兄は今、父と母と一緒にいます。せっかく幸せになれ、魂の安らぎが得られたのに、私のために呼び戻すのはかわいそうですから」
そう言うと、寂しそうに兄の棺をそっとなでます。そして一行にもう一度深々と礼をすると
「本当にいろいろと、ありがとうございました」
そう言ってほっそりとした手を差し出します。冒険者達一行との別れがすむと、アイナは荷馬車に乗り込み、兄の亡骸を両親の元に埋葬するべくキングスヒルへ向けて、出発します。冒険者達一行は、その後ろ姿が見えなくなるまでいつまでも見送っていたのでした……
 冒険者達が城門に戻り、ファーズの街中へ戻ると、街の人々が通りのそこかしこに集まり、ひそひそと噂話をしています。一行の耳に入った話から、どうやら人々は今回の事件は、ロドーリルが裏で画策した事件だったと話しているようです。
 やがて通りに集まっていた人々の中の1人が大声で叫びます
「ファリスの名にかけて!ロドーリル討つべし!!」
それに応えて、通りに集まっていた人々も叫びます
「ファリスの名にかけて!ロドーリル討つべし!!」
やがてその声は、波のように人々の間へと広がっていきます。そんな熱気の中、1人の黒ローブの魔法使いが悠然と歩み去っていくのを、冒険者達は目撃します。フードに隠れたその顔に、酷薄そうな冷笑が浮かんでいるのが垣間見れます。
 PCがその後を追おうとすると、黒ローブの魔法使いはもう人混みの中に消えてしまっています。
 アレクラスト東方を戦乱の雲が覆い尽くそうとしていたのでした…………

第34幕 エピローグ2〜戦乱の予感〜


 宮中晩餐会の翌日、冒険者達一行がファーズの街中の目抜き通りを歩いていると、街の人々が通りのそこかしこに集まり、ひそひそと噂話をしているのに気が付きます。一行の耳に入った話から、どうやら人々は今回の事件は、ロドーリルが裏で画策した事件だったと話しているようです。
 やがて通りに集まっていた人々の中の1人が大声で叫びます
「ファリスの名にかけて!ロドーリル討つべし!!」
それに応えて、通りに集まっていた人々も叫びます
「ファリスの名にかけて!ロドーリル討つべし!!」
やがてその声は、波のように人々の間へと広がっていきます。そんな熱気の中、1人の黒ローブの魔法使いが悠然と歩み去っていくのを、冒険者達は目撃します。フードに隠れたその顔に、酷薄そうな冷笑が浮かんでいるのが垣間見れます。
 PCがその後を追おうとすると、黒ローブの魔法使いはもう人混みの中に消えてしまっています。
 アレクラスト東方を戦乱の雲が覆い尽くそうとしていたのでした…………