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ガンダム戦記 1〜3話

[ガンダム戦記 キャンペーン]

セッションデータ

  • プレイ日
    • 2009年06月14日
  • 使用ルール
    • ガンダム戦記
  • シナリオ・タイトル
    • ガンダム戦記(テスト・プレイいいかげん)キャンペーン

『ジオン独立戦争記』
第1話 ウィッカー・マン
第2話 ポリス・ストーリー 〜香港国際警察〜
第3話 ショーシャンクの空に


プレイヤーキャラクター


山哲/エステル・コラーゲン軍曹 男 28歳 ジオン公国軍人
キャラクタータイプ:熟練兵 サイド3出身

能力値

意志値:10 外見値:5 体格値:6 移動値:4 感応値:8 知性値:9 運勢値:8 技術値:7 反応値:10

自制値:25 ダメージ修正:±0 Nポイント:0 Aポイント:1

修得技能

威圧:5 拷問/薬物への耐性:1 尋問:3 説得&口車:3 応急修理:3 応急手当:1 通信/センサー:1 耐久:3 生存:1 戦術:5 戦略:1 知覚/観察:5 指揮:3 回避&脱出:1 拳銃:1 ゼロG:3 MS格闘戦:4 MS操縦:6 MS白兵戦:6 運転:1 航空機/シャトル操縦:3 砲撃:6 ミサイル:3 


キャラメモ:ルウム戦役やブリティッシュ作戦、第2次地球降下作戦等に従軍したベテランMSパイロット。連邦軍の戦闘機等を7機撃墜し、サラミス級戦艦2隻撃沈の確認戦果を持つジオンのエース。
 ギレン・ザビを敬愛し「優勢人種生存説」を熱狂的に信奉する狂信者ゆえに、この世で最も尊敬する人物はギレン・ザビ。ギレンのサイン入り「優勢人種生存説」初版本を宝物にしている。


O濱/マリー・リリマン 女 15歳 民間人
キャラクタータイプ:民間人 地球・トルキスタン自治州出身

能力値

意志値:9 外見値:8 体格値:3 移動値:3 感応値:6 知性値:6 運勢値:10 技術値:7 反応値:9

自制値:22 ダメージ修正:-1 Nポイント:4 Aポイント:0

修得技能

拷問/薬物への耐性:5 作詞/著述:3 知覚/観察:1 ファッション:5 みだしなみ:3 演技:3 性的魅力:5 拳銃:3 ダンス:3 MS操縦:1 MS白兵戦:1 砲撃:1 ミサイル:1


キャラメモ:一年戦争前まではどこにでもいる少女だった。戦争が始まり、経済が破綻したことによって住む家を家族もろともに追われ、それでも両親を助けようと健気に女給として働いていた。ところが0079/8/6、更なる不幸がマリーを襲う。付き合っていた彼氏がジオンと連邦の戦争行為に巻き込まれ、亡くなってしまう。マリーは事故と説明されたが納得できず、彼の身に何が起きたのか知ろうと勤め先に来るジオン兵へ聞き込みをするようになる。戦争という大きな波に揉まれ、抗うこともままならずそれでも前向きに生きようとする少女はどうなってしまうのだろうか? 


キャラクター・データの「修得技能」の欄につきましては、「第3話 ショーシャンクの空に」終了時点の物です。 〜by監督

プレイレポート

 人類が増えすぎた人口を宇宙へ移民させるようになって、既に半世紀が過ぎていた。地球の周りの巨大な人工都市は、人類の第二の故郷となり、人々はそこで子を産み、育て、そして、死んでいった。
 宇宙世紀0079。地球に最も遠い宇宙都市サイド3はジオン公国を名乗り、地球連邦政府に独立戦争を挑む。この1ヶ月あまりの戦いで、ジオン公国と連邦軍は、総人口の半分を死に至らしめた。人々は自らの行為に恐怖した。
 圧倒的優位に立ったジオン公国は地球連邦政府に無条件降伏を勧告した。だが、地球連邦政府は降伏を拒否。徹底抗戦を宣言する。長期戦を余儀なくされたジオン軍は、戦争継続に不可欠な希少資源を確保すべく、地球上に侵攻の手を伸ばした。戦火は瞬く間に地球全土へ広がり、街を、森を、人々を焼き尽くしていった。地上に舞い降りた鋼鉄の巨人の前に、連邦軍は為す術もなく蹂躙されていく。ジオン公国は地上の半分を、その勢力下に置いた。2ヶ月余りの攻防で、両軍は戦力を消耗し尽くし、戦闘は膠着状態に陥った。そして、半年が経過していた…

第1話 ウィッカー・マン

 宇宙世紀0079 10月10日。地球上の中央アジアに位置するトルキスタン自治州に位置する、人口1万人ほどの小都市カーセンブロックは、カスピ海沿岸の資源地帯を確保するべく構築された、ジオン地球制圧軍中央アジア方面軍総司令部の後方に位置することもあり、連日、R&Rを迎えたジオンの中央アジア方面軍に所属する兵士達で賑わっていた。

 この街で両親と共に生活するマリーは、10ヶ月ほど前の開戦による地球圏の株価暴落とそれに続く経済的大不況、世に言う「ジオン・ショック」のあおりをモロに受けて、勤めていた会社が倒産した両親を経済的に支えるべく、カーセンブロックのカフェ「アソナ・ミラーズ」でウェイトレスをしていた。

 そんな「アソナ・ミラーズ」にR&Rを迎えたエステル・コラーゲン軍曹がやってくる。マリーは2ヶ月前の戦闘で、不幸にも戦闘に巻き込まれて事故死した恋人の死の真相(たぶん、永久に分からないだろう)を突き止めようと、注文のビールとサンドウィッチを運びつつ、エステル軍曹に2ヶ月前の戦闘について尋ねる物の、エステル軍曹に分かろうハズもなく、またしても空振りに終わったのだった。

 注文のビールとサンドウィッチに舌鼓を打ちつつ、6日のギレン総帥による「ガルマ・ザビ大佐 追悼演説」の録音に聞き入るエステル軍曹。

 と、突然マリーに絡み始める酔っぱらったジオン軍伍長がいた。ジオン伍長はマリーに、「オレと付き合ってくれ」等と絡むが、断られ、さらにエステル軍曹にもたしなめられてしまい、ヤケ酒を飲む始末。仕舞にはぐてんぐでんに酔っぱらって「手紙も出せないじゃないれすかぁ〜!!」「今頃、びぃ〜びぃ〜は、もう他の男とデキてるハズなんらぁ〜!!」等と訳の分からないことを叫びながら、オイオイと泣き出すのだった。

 やがて泣き疲れた伍長(ミゲル・リノリッチという名前であることが判明。連邦軍のミケル・ニノリッチとは無関係なので念のため)が眠ってしまった頃、突如、遠方から雷鳴のような音が聞こえ、同時に地響きかカーセンブロックの街を襲ったのだった。

 驚いたエステル軍曹が、アソナ・ミラーズの外に飛び出し空を見上げると、中央アジア方面軍総司令部の方角の空がオレンジ色に輝いており、カーセンブロック上空を爆音と共に連邦軍のフライ・マンタやコア・イージーの飛行編隊が、中央アジア方面軍総司令部上空へ向けて飛び去っていくところだった。

 たちまち蜂の巣を突いた様な騒ぎと、パニックに見舞われるカーセンブロックの街。そこかしこでジオン将兵達が原隊に帰還しようと慌てて走り回り、秩序を回復しようとする野戦憲兵の狂ったようなホイッスルの音が、夜の街路に空しく響き渡った。

 エステル軍曹も原隊復帰を果たそうと空しい努力を試みる物の、大通りは既に右往左往する多数のジオン軍将兵で大混雑しており、やむなく、一旦、アソナ・ミラーズの店内に引き返すことにしたのだった。

 店内には、不安そうな顔をしてエステル軍曹を見つめるウェイトレスのマリーと、未だに泣き疲れて眠り続けているミゲル伍長の姿があった。エステル軍曹はミゲル伍長を軍靴のつま先で蹴飛ばして起こすと、マリーに「表通りはパニック状態だ! キミ! 済まないが裏道を案内してもらえないか?!」と尋ねる。パニックに襲われ呆然としていたマリーがコクコクと頷くのと同時に、カーセンブロックの街を轟音と閃光が襲う。爆風に叩き割られたアソナ・ミラーズのガラス窓を通して、表通りから多数のジオン将兵の悲鳴とともに、61式戦車のキャタピラ音と12.7?機銃の掃射音が店内に飛び込んでくる。

 その音で即座に状況を悟ったマリーは、「お父さん! お母さん! うちに帰らなきゃ!」と叫び、慌ててエプロンを脱ぐと、エステル軍曹に向かって「こっちです! 付いてきて下さい!」と手招きする。店の裏口から裏路地に出ようとした二人は、店の厨房でジオンの軍票をかき集めている店長のラスル・ミラーズにも脱出を勧めたが、店長は「ワシはこの店と心中するんじゃ〜! 連邦軍が来たら、今度は連邦軍相手に商売を続けるんじゃ〜!」と頑として脱出を拒否。やむなく二人は裏路地へと向かう。

 一方、酔っぱらったまま「ジオン公国ばんざ〜い!! ジーク・ジオン!」と叫びながら表通りに飛び出していったミゲル伍長がその後どうなったかについては、杳として知れない。

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 裏路地へと出た二人は、カーセンブロックの街を知り尽くしたマリーの手引きで、何とか安全にマリーの家までたどり着くことに成功する。しかし、家にたどり着いたマリーが見たものは、61式戦車に突っ込まれて半壊した自宅の変わり果てた姿だった。

 「お父さん!! お母さん!!」と泣き叫びながら、半狂乱になって路地から飛び出そうとするマリーを、エステル軍曹が何とか押しとどめ、路地の捜索にやってきた連邦軍兵士達をやり過ごすため、ゴミ箱に身を潜めるマリーとエステル。しかし、ゴミ箱に身を潜める二人の耳にくぐもった女性の悲鳴と、何かを引きずるような音が飛び込んできたのだった。

 何事かと、ゴミ箱からそっと外の様子を窺う二人の目に飛び込んできたのは、すぐ側の裏路地で若い民間人女性を暴行しようとしている、二人の連邦軍兵士達の姿だった。「なぁ…コイツ、民間人だろ? さすがにヤバイんじゃ…」「うるせーな! どうせコイツもジオンに協力してたんじゃねぇかよ。ジオン兵相手にケツ振ってたメス犬に決まってんだ。俺たちがちょいとお仕置きしたからって罰はあたりゃしねぇよ。そんなことよりしっかり押さえとけよ」と言う連邦兵達の会話についに我慢できなくなった二人は、それぞれ軍用拳銃と恋人の形見の護身用の小型拳銃を取り出し、女性の服を引き裂いて、ズボンを下ろしていた連邦兵達を次々に射殺。危ういところで女性の救出に成功したのだった。

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 その後、近くの民家から引き裂かれてしまった女性のための服を調達した二人は、路地を通っての街の脱出を諦め、下水道から街を脱出することにする。マンホールの蓋を引き開けたエステル軍曹は、「オレはここから街を脱出するが…あんた達はどうするんだ?」と尋ねる。連邦兵に暴行されそうになり、下半身にその連邦兵の血と脳漿と、頭蓋骨のかけらを浴びてしまった女性は、真っ青な顔でブルブルと震えながら「もう…もう連邦は嫌です!」と叫び、その言葉に同意したマリーは、ブルブルと震え続ける女性の肩を抱きながら、エステル軍曹の後に続くことにしたのだった…父と母がまだ生きていることを信じ、そして、いつの日か二人に再会できることを信じて…


第1話 ウィッカー・マン 終わり
「次回予告」下水道から、辛くもカーセンブロックの街を脱出することに成功した、エステル、マリー、そしてエレーナの一行。だが、その先には、さらに過酷な運命が一行を待ち受けていた! 次回、「機動戦士ガンダム ジオン独立戦争記 第2話 ポリス・ストーリー 〜香港国際警察〜」お楽しみに!
「勝てるわけがない! あいつは伝説のスーパーサイヤ人なんだぞ…   〜by王子」

第2話 ポリス・ストーリー 〜香港国際警察〜

 カーセンブロックの下水道へと降り立ったエステルとマリー、それに連邦兵に襲われていた女性の三人は、兎にも角にも取り敢えずの安全を確保し、未だショック状態の続く女性を何とかなだめることに成功する。女性はしゃくり上げながらも、エレーナと名乗り、エステルとマリーについてこの街を脱出することに同意するのだった。

 如何にマリーがこの街の出身だからと言って、さすがに下水道についてまでは分からないので、一行はエステル軍曹を先頭に、闇雲に下水道の中を進むのであった。あっちで迷い、こっちで迷いすること約10時間。一行はようやくカーセンブロック郊外の汚水処理場へとたどり着く。

 汚水処理場で休息を取りつつ、数?離れたカーセンブロックの様子を窺うと、街には10数台の61式戦車が駐留しており、両手を頭の上に上げた多数のジオン将兵達が大型輸送車に次々と連行されていく所が目に飛び込んでくる。どうやら、カーセンブロックの街はわずか一夜の攻防で連邦軍の制圧下に置かれてしまったらしい。

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 これを見た一行は、カーセンブロックへの帰還を完全に断念、エステル軍曹は中央アジア方面軍原隊への復帰を希望するものの、中央アジア方面軍総司令部方面からは相変わらず激しい炸裂音が響いてきており、素直に原隊復帰するのは絶望的な状況であった。

 そんな中、結局一同はマリーの提案でここから最も近いジオン勢力下のジョスウェストの街を目指すことになり、日没を待って徒歩でジョスウェストの街を目指すことにしたのだった。

 街灯もない真っ暗な闇夜の中、大きな岩がゴロゴロと転がる荒涼とした荒野を歩き続ける三人。慣れない逃避行にマリーとエレーナの二人は心身共に消耗し尽くし、ともすればその場に倒れ込みそうになるエレーナをマリーが支えながら歩き続けるという悲惨な逃避行が続いたのだった。やがて、ついに倒れ込んでしまうエレーナ。すかさずエステル軍曹の容赦ない言葉か浴びせられる、「さっさと立て、またレイプされても良いのか?」その言葉にマリーが噛みついた「ちょっと! 疲れ切ってるんですよ! 思いやりがないんですか?!」エステル軍曹は冷ややかな目で二人を眺め回すと「甘えるな。ここにいるのは戦争参加と同じ、殺されたって文句は言えない」と答えるのだった…と言うやりとりがあったとかなかったとか。ともかく翌日の夜明け前、一行はついに軍用車両で偵察中のジオン軍への接触に成功する。

 ジオン兵達は、一行をうさんくさそうに眺め回しながらも、ともかくジョスウェストの街に連れて行くことには同意し、エステルとマリーの持っていた連邦兵から奪った自動小銃を取り上げると、一行を乗せてジョスウェストへと向かった。

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 ジョスウェストへと到着した、エステル、マリー、エレーナの三人はそれぞれ別々の部屋へと連れて行かれた。

 ジオン軍憲兵少佐の前へと引き出されたエステルは、カーセンブロックでの状況を説明し、原隊への復帰を希望する。しかし、憲兵少佐はほとんど聞いていないようなそぶりで「なるほど、そうかね」と言うと、エステルの身柄を憲兵曹長へと引き渡してしまう。

 一方、別室へと連れてこられたマリーとエレーナは、憲兵少尉から型どおりの質問を受けることになる。これらに答え、エステルと同じくカーセンブロックでの状況の説明を繰り返し、安全の確保と身柄の保護を訴えた二人は、激しく頷きながら「よく分かりました」と答える憲兵少尉によってジョスウェストの駅へと連れてこられる。

 憲兵曹長によって同じく駅へと連れてこられたエステルも含め、駅周辺の広場には数百人のジオン兵達が集められていた。やがて到着した軍用列車に訳も分からず詰め込まれた一行は、憲兵隊のお守り付きでジオン軍基地のあるジョスの街へと向かった。

 ジョスの街でファット・アンクルに乗り換えさせられた一行は、直援機の護衛も無しに空へと舞い上がった。やがて数時間もすると、眼下には広大な密林と、密林を縫うように蛇行して進む川の流れが広がる光景が飛び込んでくる。ファット・アンクルは不安で一杯の数百人のジオン兵、エステル、マリー、エレーナを乗せて密林を裾野に持つ山岳地帯へと降り立っていった。

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 ファット・アンクルが着陸し、ベイが開かれると同時に、陰険な顔をしたジオン軍准尉の怒号が飛び込んでくる。「さっさと降りろ! このクズ共め! 降りたらこっちへ来て、軍隊手帳を出せ!」。ジオン軍下士官として何となく状況を理解しているエステルと、民間人のため全く状況を理解できないマリーとエレーナ。大人しく軍隊手帳を差し出したエステルは、軍隊手帳をのぞき込んだ准尉に「ほぅ、MS乗りか。よーし、あのボロを操縦しろ!」と、旧型のMS−05ザク?を指さされる。

 一方、民間人として当然軍隊手帳を持たないマリーとエレーナは、必死に自分達は民間人で、何かの手違いでここに送られてしまったのだと訴えるものの、誰一人まともに取り合ってもらえない。むしろ、平服まで用意して民間人に偽変して脱走しようとするとは、念の入った脱走兵だと受け取られてしまう。それでも、マリーの必死の訴えにより、エレーナだけは何とか飯炊き(糧食班)に回してもらったものの、当のマリーは近くにいた軍曹から対MS用ロケット・ランチャーを手渡され、「もたもたするな! 軍服に着替えてさっさとアイツに乗り込め!!」と怒鳴りつけられる。その軍曹の指先には、背中に対MS用ロケット・ランチャーを背負った突撃歩兵が満載された、キュイ歩兵突撃車の姿があった。やけくそで血だらけの軍服に着替えたマリーがキュイに乗り込むと、そこには恐怖を顔に張り付かせた突撃歩兵達の姿があったのだった。

 やがて全員の出撃準備が整うと、装甲車に乗り込んでいる少佐が「これから敵に包囲された友軍を、損害に構わず救出する。出撃!」と号令をかける。号令と同時に各MSおよび、戦闘車両は猛スピードで発進し、山岳地帯を駈け降りていく。

 ガタガタと揺れるキュイ歩兵突撃車の防弾盾に、振り落とされないように必死にしがみつくマリーの前方から、やがてつい先日耳にした、聞き慣れた炸裂音が響いてきた。キュイは数名の不注意な突撃兵を振り落としつつ、前方の炸裂音の方向へと突進していく。やがて指揮塔の上に立つ少尉が、後ろを振り返り不安げに少尉を見上げる突撃兵達に怒号を浴びせかけた。「対MS、戦車戦闘用意! 降りろ! クズ共! 集中砲火を浴びるぞ!」その声に、古参の突撃兵達は次々とキュイから飛び降りていく。マリーも恐怖を押さえ込み、何とかそれに続く。マリーが飛び降りて、ゴロゴロと地面を転げ回って何とか立ち上がった次の瞬間、つい先程まで乗り込んでいたキュイ歩兵突撃車が、61式戦車の150?主砲弾の直撃を受けて、轟音と共に粉々に吹き飛ばされた。ガタガタと震えるマリーの足下に、バラバラになったキュイの装甲板や、ちぎれた腕などが転がってくる。恐怖に襲われパニックに陥ったマリーの耳には、先程の爆発によって激しい耳鳴りだけしか届かない。やがて、ぼんやりと見つめるマリーの約20m前方で、必死に何か喚いていた軍曹の頭がはじけ飛び、もはや頭を失った軍曹の首から下が崩れ落ちた。その光景は、マリーの混乱した頭には奇妙に現実離れして見え、マリーはその場にへたり込むと声を上げて笑い始めた…

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 一方、ザク?に乗り込んだエステルは、僚機のザク?陸戦型と共に、激しい戦闘が繰り広げられている現場へと急行する。なんと、エステルの前方には今まで噂でしか聞いたことの無かった、連邦軍のMSが友軍のザク?と激しい戦闘を繰り広げていた。初めて見る連邦のMSに戸惑いを覚えつつも、その動きからパイロットの未熟さを感じ取ったエステルは、素早く背後に回り込みつつ、120?ザクマシンガンの有効射程に入るやいなや、白くカラーリングされた連邦のMSの左後背部に120?弾を速射でたたき込む。しかし、連邦MSの驚愕の装甲の前に全てはじき返されてしまうのだった(←「なんなんだぁ〜今のはぁ〜?」 by伝説のスーパーサイヤ人)。「バカな! 連邦のMSはバケモノか?!」(←「オレがバケモノ? 違う。オレは悪魔だぁ〜」 by伝説のスーパーサイヤ人)咄嗟に叫んだエステルの耳に僚機からの通信が飛び込んでくる。「バカか? ザクマシンガンなんか通用するかよ。連中の装甲をぶち抜くにはこうやるんだ!!」呆然と見つめるエステルの目の前で、僚機のザク?はヒート・ホークを抜くとショルダー・スパイクごと機体を叩きつける。勢い余ってもつれ合った2機のMSは、エステルが呆然と見守る中、崖下へと転落していった。目の前の余りの光景にショックを受けたエステルの口から、思わず知れず声が漏れた「無茶苦茶だ…」

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 突然の衝撃に我に返ったマリーは、目の前にかがみ込んでいるジオンの伍長から殴られたことに気づいた。伍長は、口から唾を飛ばしながらマリーに向かって「バカ野郎! 死ぬぞ! ぼーっとしてんな! 応戦しろ!!」とわめき立てている。周囲にはむせかえるような血の臭いと、硝煙、そして土の臭いが充満しており、マリーは思わず胃の中の物を戻していた。周囲には間断なく12.7?機銃の掃射音が響いており、時折聞こえる150?砲の炸裂音がアクセントを添えている。その場にかがみ込んで胃の中の物を吐き続けるマリーの身体に、唐突に生暖かい液体が降り注いだ。見上げるとさっきまで目の前で喚いていた伍長の胸に大穴が空き、穴から鮮血を吹き出しながらマリーの身体に倒れ込んでくるところだった。余りの光景に悲鳴と泣き声を上げたマリーは、這ったままその場を後にする。(とにかく安全なところに…)生存本能に従って林の方へと向かうマリーは、思わず泣き出していた「お父さん…お母さん…たすけて…」。

 這ったまま進んだ林の中には、左腕を失い擱座した状態のMS−06Jザク?陸戦型がマリーをを出迎えた。開け放たれ無人となったコックピットが、まるで誘っている様にマリーには感じられた。マリーは泣きじゃくりながらも、開け放たれたコックピットに向かって全速力で駆け出す。マリーがザク?陸戦型のコックピットに乗り込んだのは、生存本能が優先されたためであり、単に本能的に(外に生身のまま立っているより安全)と考えたからにすぎなかったのだが、マリーは生まれて初めて乗り込んだMSのコックピットに不思議な心地よさを感じていた。まるで居るべき場所にいるような…とでも表現すればいいような奇妙な安堵感がマリーを包み込んだ。生まれて初めて乗り込んだMSの操縦方法を「本能的に」感じ取ったマリーの脳裏に、様々な光景がフラッシュ・バックしていく「恋人の死」「自宅に突っ込んだ61式戦車」「エレーナを陵辱しようとする連邦軍兵士」「マリーに向かって熱っぽく頷く憲兵少尉の顔」「緑の地獄」「足下に転がってくる、ちぎれた左腕」「首から上を吹き飛ばされた軍曹の胴体」「マリーに鮮血を浴びせながら倒れ込んでくる伍長の驚いたような顔」…マリーは高ぶる感情のままに、涙で顔をくしゃくしゃにしながら魂の底から雄叫びを挙げ続けていた…

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 目の前のあまりの光景に、暫し我を忘れてしまっていたエステルは、8時方向のすぐ近くの木立からMSが立ち上がるのに気づいた。エステルの軍人としての本能がとっさにエステルの精神を現実へと引き戻し、エステルは反射的にザクマシンガンを背後で立ち上がったMSに向けていた。ザク?のモニターに映し出されていたのは左腕を失ったザク?陸戦型の姿だった。左腕のない隻腕のザク?陸戦型は、まるで素人が操縦しているようなフラフラとした不安定な動きで、木立から進み出てくる。しかし、エステルを驚かせたのはザク?の通信機から響いてくるマリーとおぼしき人物の狂ったような雄叫びだった。エステルはザク?の通信機に向かって「マリー? マリー・リリマンか?」と呼びかける。が、相変わらず通信機からは、マリーの物とおぼしき狂ったような雄叫びが響いてくるだけだった。エステルが嘆息しながら頭を振っていると、突如、目の前のザク?は61式戦車に向かって走っていったかと思うと、ヒートホークを抜き、次の瞬間には61式戦車を叩き潰していた。ヒートホークの刃の下で、61式戦車が爆発する。すぐ近くにいたもう1台の61式戦車は全速力で後退しながら、突如現れたザク?に向かって、150?主砲の照準を合わせ始めた。エステルは、咄嗟にその61式戦車にザクマシンガンをたたき込むと、通信機に向かって「バカ野郎! ボサっとしてんな! まだ1台残ってるぞ!」と叫ぶ。その声に突き動かされたかのように、ザク?はザクマシンガンを受けて煙を噴き上げている61式戦車に駆け寄ると、再びヒートホークを振り下ろしたのだった…

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 戦闘は終わった。エステルは、ザク?陸戦型のコックピットで膝を抱えてうずくまったまま泣きじゃくるマリーに掛ける言葉が見つからなかった。暫くそうやってマリーを無言で見下ろした後、エステルはマリーの肩を優しく叩くと「もう、終わったぜ。とりあえず、今日は生き残ったんだ…」と声を掛けるのだった…


第2話 ポリス・ストーリー 〜香港国際警察〜 終わり

「次回予告」地獄のような戦場を生き残ったマリーとエステル。だが、それは単に死ぬのが先延ばしになっただけのことだった。激しい損害を出した第64特別戦闘大隊は、兵力の補充を行うため、基地へと帰投する。そんな中、MS乗りとしての能力を認められたマリーは、本人の意志とは無関係に機動MS中隊へと転属となる。新しく着任した小隊長の元、訓練に出撃したマリー達第4小隊は…?! 次回「機動戦士ガンダム ジオン独立戦争記 第3話 ショーシャンクの空に」お楽しみに!
「よく頑張ったと、誉めてやりたいところだ! 〜by伝説のスーパーサイヤ人」

第3話 ショーシャンクの空に

 とにもかくにも、地獄のような戦場から生還した、エステルとマリーを含むジオン軍部隊は、大損害を被り、半ば敗残兵のような足取りで基地へと帰投するのだった。

 ボロボロになりながらも、何とか基地へと帰投した生存者達に、先刻の本部付准尉が怒鳴り声を挙げる。「生き残った補充兵は一列に並んで、軍隊手帳を取りに来い! 補充兵はすぐに死んじまうからな。手帳がないと戦死報告書が作れん」。

 敗残兵のようにしか見えない列に並ぶ、エステルとマリー。列に並ぶ補充兵達の足取りは重く、皆一様に疲れ切り、不安そうな表情を浮かべていた。

 やがて列の先頭がマリーの番になる。マリーの前に仁王立ちする本部付准尉は、マリーを胡乱な目つきでニラミつけながら「官姓名と所属部隊を言え」と声を掛ける。しかし、マリーには答えるべき官名も所属部隊もない、おろおろと辺りを見回した後、ボソッと「マリー・リリマンです」とだけ答えるのだった。その答えにさらに目つきが険悪になる本部付准尉。「聞こえなかったのか? お嬢さん? オレは官姓名と所属部隊を言えと言ったはずだ。軍隊手帳を返せんだろうが」「わ、私は兵隊なんかじゃありません! ただのウェイトレスです!」次の瞬間、マリーの体は殴り飛ばされて床に転がっていた。「ふざけるな! このケツの穴め! オレの耳にはキサマがザク?陸戦型で、確認戦果2と報告を受けてるぞ! 何がウェイトレスだ! もう少しマシな嘘を付きやがれ、この脱走兵が!」驚きとショックと痛みで、思わず殴られた頬に手をやったマリーの手の甲に暖かい涙が伝って落ちた。涙で歪んだマリーの視界に今にもマリーを絞め殺しそうな勢いの本部付准尉の姿が映った「ケツを蹴っ飛ばされんうちに立て! この根性なしが!」。マリーは泣きながら頬に手をやったままのろのろとその場に立ち上がった。そんなマリーに本部付准尉の容赦ない言葉が飛ぶ「官姓名! および所属部隊と認識番号を言え!! さっさとしろ! このケツの穴ヤロウ!!」驚きと恐怖にすくみ上がるマリー。そんな時、本部付准尉に声を掛ける人物が居た。「止めろシュルツ。彼女の素性なんかどうだっていい。彼女はオレの部隊で預かる」。マリーが声のした方を見ると、20代前半とおぼしき若い少尉が立ってた。「しかし、少尉殿。コイツは…」本部付准尉は少尉に抗議の声をあげるものの、「もう良いと言ったはずだ。くどいぞシュルツ」少尉はそう言うと、優しく微笑んでマリーに手を差し出した「オレはエミール・ドノバン。第1機動MS中隊第4小隊長だ。よろしく頼む。ウェイトレスさん」マリーは泣きながら、差し出されたエミール少尉の手を握るのだった…

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 そのやりとりを目撃していたエステルは、ホッと胸をなで下ろした。(まぁ、普通、元ウェイトレスの民間人がマニュアルもなしに、いきなりザクを操縦して戦車を2台破壊した、何つっても信じないよなぁ…この目で目撃した俺自身信じられないんだから…)エステルは返納された軍隊手帳を胸ポケットにしまうと、エミール少尉とマリーが立っているところへ向かって歩き出した。

 「申告します。補充兵エステル・コラーゲン軍曹であります。第1機動MS中隊第4小隊へ配属を命じられました」しゃくり上げるマリーの肩を、優しく叩いていたエミール少尉は、顔を上げると笑顔で手を差し出した「小隊長のエミール・ドノバンだ。敬礼はいい。東南アジア戦線へようこそ、軍曹。よろしく頼む」握手をすませたエミール少尉は、エステルとしゃくり上げるマリーを連れて基地の奥へと案内する。「まず、兵舎へ案内するよ。少しゆっくり休んだ方が良い。今日は大変な1日だったろうからね…部隊や戦況の説明は、明日でも良いだろう」ゆっくりと基地の中を歩いていく3人の姿は、やがて粗末な兵舎の中へと消えていったのだった… 

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 翌朝早く、起床号令でたたき起こされたエステルとマリーが、基地の中の食堂で、豆のスープにパンと言う朝食を取っていると、トレーを抱えたエミール少尉が同じテーブルに腰を下ろした。エミール少尉は、マリーに微笑むと「おはよう。夕べはゆっくり休めたかな」と言ってくる。マリーは夕べ、慣れない兵舎の固いベッドと、戦闘の恐怖とショックから、一睡も出来なかったのだが、持ち前の明るさを発揮しようと笑顔で「ええ。お陰様で」と答えるのだった。マリーの目の下にはコンシーラーでも隠せないはっきりとした隈が出来ていたが、エミール少尉はそれに気づかないのか、あるいは気づいていても気づかないふりをしているのか、ゆっくりと頷くと「それは良かった。実は今日は、MSの実機を使って訓練をしてもらうから、体調は万全の方が良いと思ってね。朝食が済んだらすぐにハンガーまで来て欲しいんだ」と告げるのだった。

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 朝食が済んで兵舎に引き上げる傍ら、マリーと別れると、エステルはすぐさまエミール少尉に向き直った。「本当に実機訓練を行うおつもりですか? 信じられないかも知れませんが、アイツは本当に3日前までウェイトレスをしていたんですよ? いくら何でも無茶なんじゃあ…」エミール少尉は片手を挙げて遮ると「言ったろ、彼女の素性なんてどうだって良いって。軍曹、ここ(第64特別戦闘大隊)で重要なのは昨日までどこで何をしてたかじゃない。今日、ここで何が出来るのか? それだけさ。それに昨日はウチで預かると言ったが、正直彼女がどこまで出来るのか知りたいんだ。ちゃんと戦力として使い物になるなら良し。足手まといにしかならないのなら、ここじゃあ即、部隊の全滅に繋がる。それは彼女にとっても、オレ達にとっても歓迎できる事じゃあないからね。だから、彼女の正確な実力が知りたいのさ。彼女のためにもね」エミール少尉はそう言い残すと、ゆっくりと将校用の個人兵舎へと向かいながら背中越しにエステルに声を掛けた。「15分後にハンガーに集合してくれ。彼女の実戦訓練の相手をしてもらいたい。くれぐれも手を抜かないでくれよ、軍曹」

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 朝食後、実機訓練に出発したエミール少尉以下、エステル、マリーの第4小隊のメンバーは、それぞれ3機のザク?陸戦型に分乗し、訓練エリアを目指していた。エステルとマリー、それぞれのザクの通信機にエミール少尉からの通信が入る。「訓練エリアについて配置に付いたら、オレの合図で戦闘訓練を開始してくれ。120?ザクマシンガンの中には空砲が入っているし、ヒートホークには訓練用の緩衝剤が巻いてある。ザクのコンピューターのモードは整備中隊によって訓練モードに設定されているから、モードをいじったり切り替えたりしないよう、注意して欲しい。いいね」「了解しました」「り、了解です…」各自が返答すると、ザクの通信機からエミール少尉の苦笑が漏れてきた。「マリー伍長。そんなに緊張しないでくれよ。今日は君の実力を見せて欲しいんだ。相手のエステル軍曹は歴戦の猛者だ。誰も君に勝てなんて言っちゃあいないよ。ただ、君の実力を見せて欲しいだけだ。君がどこまでやれるのか、知っておきたいんだ。幸い、今日は訓練で誰も死にはしない。リラックスして訓練に望んで欲しい。分かったね?」マリーは、コックピットのシートの背もたれに体を預けると、大きく息をついて今朝支給されたばかりの制服の襟元を少し弛めた。(そっか…今日は誰も死なないんだよね。よーし!)「はいっ! 了解しました!」マリーは元気よく返答していた。

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 訓練エリアへと到着した第4小隊の面々は、エミール少尉の指揮の下、それぞれの配置に付いた。エステルとマリー、各機の通信機にエミール少尉の声が響く。「よーし。各機、準備は良いか? それでは…戦闘訓練はじめ!」(相手は軍曹。それに歴戦の猛者…先手を取らなくっちゃ、やられる)マリーはザクマシンガンを構え直すと、ゆっくりと林の中を前進させつつ、モノアイを左右に振ってエステル機の姿を探し始めた。

 そのマリー機の姿を、コックピットのモニター越しに確認したエステルは薄く笑うと、すぐさま自機をマリー機の後背へと回り込ませた…

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 コックピットの操縦桿を握るマリーの手のひらが、緊張と不安でじっとりと汗ばんでくる。マリーは操縦桿を握り直すと、エステル機の姿を探して、コックピットのモニター越しに前方の森林地帯に目をこらした…と、その時だった、突然マリー機の通信機にエステルの声が飛び込んできた。「素人め! どこを見ている!」その声と同時に、マリー機の機体が激しく振動し、シミュレーションセンサーが警告音を発する。マリーの後方からはコックピット越しに120?ザクマシンガンの発砲音が響き渡った。「そんな! いつの間に後ろに?!」マリーは思わず叫ぶと、すぐさま機体を反転させて、自機を後退させつつ、ザクマシンガンをエステル機に向けて発砲した。しかし、エステル機は素早い動きでマリーのザクマシンガンを軽々とかわすと、両膝を曲げてかがみ込むような姿勢を取った。エステルは口元を歪めてニヤリと笑うと、ザクのスラスターのスロットルを全開に空けた。たちまちザクのスラスターが猛烈な勢いで噴射を始め、同時にエステル機の両足が大地を蹴る。エステルのザクは空中高く舞い上がるとマリー機めがけて上空からザクマシンガンを叩き込んだ。「はっ! 丸見えだぞ! ひよっこ!」再びマリー機の機体が激しく振動し、シミュレーションセンサーが甲高い警告音を発する。マリーは思わず両手で顔をかばうと悲鳴を上げていた。マリーはたまらず機体を反転させると、全速力で森林エリアの奥の方へと逃げ込んでいった。

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 轟音と共に、大地に着地したエステル機は、機体を起こすと、口元から蒸気を吐き出しながら、モノアイを左右に振った。「どこに隠れた! 鬼ごっこの訓練じゃあないんだぞ! 臆したか! 伍長! 昨日の戦果はまぐれだったのか?!」エステルのザクの外部スピーカーから、エステルの声が訓練エリアに響き渡る。エステルはマリー機を探してゆっくりと訓練エリアを捜索し始めた…

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 (ゆっくり…慎重に…落ち着くのよマリー。チャンスは一度だけ…よーく狙って…)深い森の中でザクの機体をかがめて慎重に狙いをつけていたマリーは、一度大きく深呼吸した。緊張で再び手のひらが汗ばんでくる。と、マリーの視界にゆっくりと前方を横切るエステル機の姿が映った。マリーはごくりとつばを飲み込むと。エステル機がザクマシンガンのレチクルの中心にやってくるのを待った…

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 「当たれぇぇぇぇぇーー!!!」マリーの絶叫と共に、森の中に120?ザクマシンガンの発砲音と空薬莢が地面に落ちる音が大量に響き渡った。空砲とは言えザクマシンガンの発砲音と振動はすさまじく、マリーの乗ったザクの機体は激しく振動する。が、しかし、起死回生のマリーの一撃もまるで待っていたかのようなエステル機の動きによって軽々とかわされてしまった。「そこかぁ!」エステルは即座に機体を反転させてザクマシンガンを構え直すと、速射で森林奥の発射光に向かってザクマシンガンを叩き込む。またしても激しい振動と警告音がマリーの耳に飛び込んできた。モニターには左腕が致命的な損傷を受け、使用不能である旨の警告文が映し出される。(だめだ…勝てないよ…実力に差がありすぎる…)絶望的な気分に支配されたマリーの頭に、ふと、ある考えが去来した。(そうだ…昨日…昨日はどうしたんだっけ? そうか…どっちみちこのままじゃ、絶対に勝てない! やるだけやって見なきゃ!)マリーは顔を上げると、スラスターのスロットルを握りしめた。「これならどうだぁぁぁぁ!!!」雄叫びと共に、スロットルを全開に叩き込む。

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 「おおっ!」エステルが驚いて見上げる目の前で、マリー機は森の中から飛び出してくると、空中でザクマシンガンを放り投げ、すぐさま右腕で緩衝剤の巻かれたヒートホークを抜きはなった。「まずいっ!」咄嗟に回避姿勢を取ったエステルだったが、間に合いきれず、マリー機の着地と同時に、左肩にヒートホークの一撃をモロに受けてしまっていた。エステル機のシミュレーションセンサーが激しい警告音を発し、同時に機体の左腕に使用不能な損傷を受けた旨の警告文が、モニター上に映し出される。「くっ! バ、バカな、このオレが素人にっ!? これが噂のニュータイプかっ…!?」それでもエステルは、すぐさまザクマシンガンを捨てて、ヒートホークに持ち替えると、機体をマリー機の左側面に回り込ませつつ、反応し切れていないマリー機の頭部目がけてヒートホークを振り下ろした…

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 「当たった? 当たったの?」肩で息をしながら、暫し呆然とするマリーの機体を激しい振動が襲い、同時にモニターが真っ暗になった。思わず悲鳴を上げるマリー。「えっ?! な、何? どうしたの?」マリーの目の前のモニターには頭部に使用不能な損傷を受けた旨の警告文だけが表示され、真っ暗なコックピットの中を照らし出していた。(こ、殺される…!)真っ暗なコックピットの中で、マリーの全身を恐怖が駆け抜ける。と、同時に通信機からエミール少尉の声が聞こえてきた。「よーし。そこまで! 訓練終了だ。二人ともご苦労様。帰投してシャワーでも浴びよう」その声に、マリーは完全に脱力してシートの背もたれにヘナヘナと倒れ込んでいた。「そっか…訓練だったんだっけ…」マリーの全身は汗びっしょりだった…

 エミール少尉は基地への帰投途中、先ほどの訓練データをコンピューターに解析させて検討していた。「フッ…面白いな…」思わず知らず、少尉の口元から笑みが漏れていたのだった…


第3話 ショーシャンクの空に 終わり
  
「次回予告」未だ充分な訓練も積んでおらず、新しい環境になれてもいないエステルとマリー達第64特別戦闘大隊に新たな命令が下った。それは、連邦軍極東方面軍に対する大規模な攻撃計画の先鋒を務めよ、と言うものだった。新たな命令に激戦の予感が立ちこめる! そして、ついに“アノ”大物キャラも登場か?! 果たして、マリー達は生き残ることが出来るのか? そして、大物キャラ登場でキャラを喰われたりしないのか? 次回「機動戦士ガンダム ジオン独立戦争記 第4話 仁義なき戦い〜広島死闘篇〜」お楽しみに!
「ようやく戦う気になったようだか、その程度のパワーでこのオレを倒せるとでも思っていたのか! 〜by伝説のスーパーサイヤ人」


※プレイ・レポートの内容と実際のプレイ内容では、若干、変更になった点があります。例)輸送列車→ファット・アンクル等 この場合、プレイ・レポートの内容が優先されますので、あしからずご了承下さい。 〜by監督

マスターの感想・反省

 ふぅ〜…ようやくレポートが書き終わりました。いゃ〜よくもまぁ、あんなショボイシナリオでここまで書き上げたもんだと、我ながら感心しております。
 今回のセッションは、「ガンダム戦記」のテストプレイを目的として少人数プレイ前提で行うことにしておりました。「ガンダム戦記」は以前にも一度プレイしておりますが、何せあれからずいぶん経っていますし、一回しかプレイしていないのでルールをほぼ完全に忘れていました。なわけで、テスト・プレイと相成ったわけですが、あまりにも参加人数が少なかったらGMとPLでキャラを作って殺し合いをしようかとも考えていましたが、さすがにそれでは時間が持ちそうになかったことと、PLが二人いましたのでシナリオを遊んでみることにしました。
 今回のシナリオは、要するに「頭の中に入っている」と言う程度のひどい出来のモノでしたが、もともと「ガンダム戦記」と言うゲームは、MS戦闘がメインで後はキャラプレイが少々というゲームスタイルで遊ぶモノらしいので、こんなモンでよかろうかと見切り発車してしまった次第です。そう言うわけでセッションがつまらなかったとしたら、それは多分に私の責任でしょう。その場合には、この場を借りてお詫び申し上げておきます。 上記の様に、「ガンダム戦記」と言うゲームは、どちらかというとセッション内容がSLG+キャラプレイというモノになりがちなゲームでして、本質的にはあまり凝った内容のシナリオには向いていないようです。ただ、ゲームマスターとしてシナリオを準備するのが滅茶苦茶楽なので、今後、エステルやマリー達、あるいは視聴者の皆様からのご要望があれば続けていきたいと思います(シナリオの腹案は既にありますし)。
 あと、ゲームマスターがルールに不慣れなため、PLの皆様方値にはセッション中、ロード時間(ルール確認時間)を度々取ってしまい、申し訳なく思っています。テストプレイと言うことでご容赦願いたいと思います。ありがとうございました。 


参加者の感想・反省



<山哲>
 まずはお疲れ様でした。
 いや〜なんかあれよあれよという間に追いつめられて、どうにか街を脱出、ジオンに助けられてさてこれから奪還戦…と思ったら何ですかそのナチのユダヤ人輸送列車のようなすし詰め列車は(笑)。
 熟練兵ですのでああこれが噂に聞く懲罰大隊送りかと憂鬱な気分になっている横で何も知らないマリーとエレーナ。
 「すまない…」
 心の中で二人にわびるエステル。
 送り込まれたのは第64特別戦闘大隊。「何が特別だこのクソッタレめ」とつばを吐くエステル。
 そして、エステル達は休む間もなく前線へ…。
 「敵は先行量産型ジム。マシンガンは装甲通らないから」
 とさらりとぬかすGMに、最早破れかぶれな気分で戦場へ。幸いなことにジムとは戦わずにすみましたが、まさに「連邦のモビルスーツは化け物か!?」と言いたくなりました(笑)。
 その後の模擬戦ではマリーがニュータイプとしての片鱗を見せ、3連続6ゾロ…。
 マジッスか(笑)。
 根性と熟練兵としてのプライドでどうにかしのぎ、模擬戦は終了となりましたが、「ば、バカな、このオレが素人にっ!? これが噂のニュータイプかっ…!?」と青い顔で呟くエステルでした。
 なんかこう、この第3話でエステルの立ち位置が決まった気がします。バニングの様に渋い指導役としてやがては主人公(マリー)の成長のために死んでいくという…(笑)。

 当初の設定ではギレンに忠誠を誓うガチガチのジオニズム主義者の設定だったのですがどうもそう言うキャラとして行動できませんでした。
 次回は設定を変更して望みたいと思います。


<O濱>
 総裁力作のプレイレポートにちょっとビビリましたよ? 2話、3話の仕上がりが楽しみです。
 
 セッションについては、少人数PLということもあってか役割配分が非常にわかり易く、単純にキャラクターにのめり込んで楽しく遊ばせて頂きました。ジオン寄りのキャンペーンということできっと非道い目に遭うに違いないと意気込みキャラ立ちやすそうなパラメータの割り振りをしたのですが、今のところ発揮できず。潜入任務とかでカツみたいなのをコロッと騙したい……。某所じゃピンク髪はINRANだと定説らしいので、小説版ガンダムのよーな外道展開を期待しております。
 
 プレイについての反省は、今回もキャラ視点からシナリオを見ることしか出来ず、俯瞰して先を読むことは出来ませんでした。要精進ってことで、次回頑張るよっ! せっかくニュータイプなんだから先読みして「そこだっ!」とか言わないとな、うん。
 
 ニュータイプっちゃぁ、3話で山哲さんの熟練パイロットキャラと模擬戦闘を行ったんですが、さいころの神様が降臨されまして。3連続6ゾロで追い詰めることが出来たのがとても印象深いシーンでした。まぁ運によって出来た場面なのでPLスキル的には何ですけど。ブッシュを飛び越えてマシンガンからヒートホークに持ちかえ切りかかるなんて絵的にはかなりイケてるはず……これで視聴率も少しは上がりましたかねっ!?
 
 それではまた、次回レポートにて!